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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『日傘を差す女』 伊集院静著

     「推理小説で人のかなしみを描く」という強い思いが伝わってきた。著者2作目となる推理小説は東京、和歌山、青森が舞台。荒々しい海や、そこに暮らす人々の心の機微がこまやかに描かれている。

     東京・永田町のビルの屋上で、老人男性の遺体が見つかった。和歌山県に住む捕鯨船の砲手で、胸にはもりが刺さっていた。その後も同様の凶器で殺害された遺体が次々と発見される。刑事たちが各地に赴き地道な捜査を重ねると、鍵を握る人物として日傘を差す女が浮かんできた。

     作中、ある刑事は「人が罪を犯した状況を見ると、そこに社会の悪というものに巻き込まれたり、手を染めざるを得なかったりする事情がある」と話す。この言葉通り、事件の背景に潜む社会の光と影を垣間見た。(文芸春秋、1700円)(美)

    2018年09月05日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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