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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『光の人』 今井彰著

     戦後、数多くの戦災孤児が出た際、彼らの生活基盤を作るため孤軍奮闘した男性がいた。実在の人物をモデルにした小説だ。

     1958年、幸太郎は東京都内にアパートを借りて「命の家」と名づけた。義務教育期間ではなく、成人前で職業能力も身につけていない10代後半の男女が安心して暮らせる場を作ろうとしたのだ。ここでの生活を経て、紳士服の仕立て職人になった者も出た。時代を経るにつれ、施設は複雑な家庭の事情を抱えた者が増える。

     お金がないのに主人公はひたすら孤児に愛を注ぎ、「大事なことは子供を褒めて、認めてあげることです」と繰り返す。なぜ、ここまで……と思ったとき、戦争で負った彼自身の傷が浮かび上がる。こんな凡庸な言葉は使いたくないけれど、涙抜きには読めない。(文芸春秋、1800円)(待)

    2018年11月07日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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