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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『ブルーハワイ』 青山七恵著

     俳句に、薬喰くすりぐいという季語がある。冬場に滋養となるものを食べることだ。作家の短編集に触れて、ふとこの言葉を思い出した。

     <わたしたちみたいな、りっぱじゃない、気の小さい人間ばかりいる、秘密の花園みたいなところがあったらいいのにね>

     表題作のさりげない会話が胸に残れば、もう作家の世界にひきこまれている。都会での教員生活に疲れて地元に帰ってきた女性と教育実習時代の教え子。内気で真面目なかつての義兄をひそかに慕う女子高生。民謡のちゃっきり節全国大会のかつての優勝者……。

     内面にさびしさを抱える人々の生が、時にはきしみ音をたてながら少し前に動き出す。デビュー10年を過ぎて熟してきた著者の物語の言葉とともに、一編ごとに温かく染み込むのだ。(河出書房新社、1550円)(待)

    2018年11月21日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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