文字サイズ
    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『加藤周一はいかにして「加藤周一」となったか』 鷲巣力著

     芸術から政治まで幅広く論じ、戦後の論壇に足跡を残した評論家、加藤周一(1919~2008年)。『日本文学史序説』と並ぶ代表作で、41歳までの半生をつづった回想録『羊の歌』を精読しながら、「知の巨匠」になっていった道筋を探る。

     加藤の元担当編集者である著者は、『羊の歌』に記された虚構をそぎ落とし、匿名の人物を明らかにし、時代背景に照らしながら丁寧に読み解いていく。さらに、東京帝国大医学部入学前の浪人生活、最初の結婚、米国留学を検討したことなど、記述されなかった人生の重大事について、遺族への聞き取りを踏まえて、書かなかった理由を推測する。

     すると、合理的で冷徹に思考する西洋派知識人のイメージとは別の一面が浮かび上がり、加藤周一像はより立体的なものになる。(岩波書店、3500円)(睦)

    2018年11月28日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク