文字サイズ
    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『愛読の方法』 前田英樹著

     批評家として自らも多くの本を書いている著者が、冒頭から、プラトンや中島敦の文章を引いて「文字」の害を入念に説く。見得みえでする読書は人を間抜けに見せること。話された言葉と違い、文字にされた言葉は魂から遊離した符号になること。行き着く先が、目の前の人間を見ずスマホの電子文字だけに集中する「文字」の極みであること。

     書かれた文字ほど、安易に信じられがちで危険という指摘は耳が痛い。逃れる方法は、何度でも読むに足る優れた本を、愛して読むことだという。江戸時代に儒学者伊藤仁斎が『論語』を「最上至極宇宙第一」とたたえ、論ずるより熟読に徹した姿を例に出す。

     繰り返し読んだ古典がどれだけあったか。今からでも愛読書は見つけられるか。不勉強が身にしみる。(ちくま新書、760円)(央)

    2018年12月05日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク