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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『いま、息をしている言葉で。』 駒井稔著

     古典を読みたしと思えども、あまりにも遠し――。「要は」を拒む深さがある古典には、翻訳の壁もあり、なかなか手が届かない。

     この壁に挑み、2006年に光文社古典新訳文庫を創刊した初代編集長の奮戦記である。語学は得意とはいえず、自称「浅学非才」。ただし、一編集者として冷戦とバブルの崩壊という激動に足元を揺さ振られ、中年になってから人生の指針を求めて翻訳で読んだ古典愛だけは誰にも負けぬ。それが出発点だった。

     今に息づく言葉として古典を感じたい、という著者には妥協がない。訳者と膝詰め談判し、ちゅうや氏名の表記法など、細部にもこだわるさまは圧巻である。

     『カラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫訳)が累計100万部を突破したのは、偶然ではなかったのだ。(而立書房、2000円)(鵜)

    2018年12月12日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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