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    本にまつわるさまざまな話題を特集します。

    小説賞「夜は終わらない」 星野智幸さん 49

    奇想天外な仕掛け力強く

    • 栗原怜里撮影
      栗原怜里撮影

     1997年のデビューからしばしば、「難解な小説を書く」と言われてきた。

     物語の形を整えるより、多少読みにくくとも、言葉そのものに力のある小説を書こうとしていたからだ。今もその思いは変わらないが、受賞作『夜は終わらない』は、言葉の力強さに加え、先へ先へとページをめくらずにはいられない、物語としての力も持つ。

     「作家人生のすべてを注ぎ込み、4年かけて書いた作品でした。この受賞で、このままどんどん行きなさいと背中を押してもらったように感じています」

     『夜は終わらない』は、『千夜一夜物語』に刺激され、執筆した長編だ。つづられるのは、男を監禁し、自分を夢中にさせる話をしなければ殺す、と脅す女に、男たちが命懸けで語った物語。イルカと人間の女の恋など、どれも奇想天外で、読者を惑わす別の仕掛けもある。語り手が、男から物語の登場人物、さらにまた別の登場人物へと移り、先が全く見えなくなるのだ。

     「多くの人が書き継いできた千夜一夜物語には太刀打ちできないとしても、一人の書き手の限界は超えたいと思ったんです」

     自身の存在意義は、誰も出合ったことのない小説を書くことにある、と考えている。「自分には才能がないと思っていたので」

     大学卒業後に新聞記者になった理由も同じだが、結局は夢を諦め切れず2年半で退社、「日本の常識が通じない世界を見たい」とメキシコに留学した後、小説を書き始めた。実際に書いてみれば、「大げさだけれど、それなしでは生きられない状態になったんです」。

     サッカーの熱狂と、政治や社会の問題をたくましい想像力で覆してしまうラテンアメリカ文学を愛し、自ら社会活動に積極的に関わってきた。2010年には、ホームレスの人たちへの支援として、彼らにこれまでの人生や経験を書いてもらい、表彰する「路上文学賞」を創設、選考委員も務めてきた。

     もちろん作品の多くも、社会への批評性を持つ。大江健三郎賞に輝いた『俺俺』なら、他人への想像力を欠く「俺」が無限に増殖する様が、自己中心的な人間が増えた現代社会へ警鐘を鳴らす。執筆初期に東日本大震災が起きた『夜は終わらない』には、「個々人が様々な物語を語り、想像することで、亡くなった人が存在する場所を作れるはず」との思いも込めた。

     「僕は、自分も存在していいんだと小説に肯定されてきた。だから、その力を自分のバージョンに更新し、今を生きる人に届けたい」(文化部 村田雅幸)

    2015年02月11日 08時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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