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    「とと姉ちゃん」主要2人の著書、関連書

    庶民と寄り添う姿鮮明

     NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で高畑充希さん演じるヒロインの小橋常子は、雑誌「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子しずこ(1920~2013年)がモデルだ。同誌の名物編集長、花森安治(1911~78年)と二人三脚で庶民の暮らしに寄り添った人生を、著書や関連書を通して紹介したい。

    大橋鎭子

     「とと姉ちゃん」の常子は静岡・浜松出身だが、鎭子は北海道、東京、鎌倉で少女時代を過ごした。父の遺言で父親代わりになると誓ったドラマのエピソードは実話を下敷きにしており、晩年の自伝『「暮しの手帖」とわたし』(暮しの手帖社)に詳しい。

     1946年、20代半ばで花森と自身の妹2人らとで出版社を設立、2年後に「手帖」を創刊し、社長兼編集部員として働いた。今年3月刊のビジュアル本『しずこさん』(同)を読めば、取材から原稿取り、モデルも務めたパワフルな働きぶりに触れることができる。

     一方、ライフワークとして「手帖」に長期連載したエッセー『すてきなあなたに』(同)では、料理、洋服など四季折々の暮らしの中にあるささやかな幸せを、優しく語りかけるようにつづった。その文章の魅力についてエッセイストの岸本葉子さんら女性8人が語る、4月刊の『大橋鎭子さんが教えてくれた「ていねいな暮らし」』(洋泉社)からは、鎭子の審美眼が、次世代の女性に与えた影響の大きさもうかがえる。

    花森安治

     花森は、「とと姉ちゃん」に今後登場する「あなたの暮し」編集長、花山伊佐次のモデルで、ドラマでは唐沢寿明さんが演じる。

     花森は戦中、大政翼賛会の宣伝部で国策広告作りに携わり、強い後悔の念を抱いていた。津野海太郎『花森安治伝』(新潮文庫)や馬場マコト『花森安治の青春』(潮文庫)、酒井寛『花森安治の仕事』(暮しの手帖社)などの評伝では、日々の暮らしを大切にすることが戦争をなくすことにつながるとの信念で、雑誌作りに打ち込んだ花森の姿が描かれている。

     「手帖」で長年書き続けてきた文章から29編を自選した『一●(いっせん)五厘の旗』(同)は、庶民の側に立ち続けた花森の真骨頂と言うべき代表作だ。中でも印象的なのが「手帖」の名物コーナー「商品テスト」について振り返った文章。日用品の耐久性、使い勝手などを徹底的に検証する企画で、「石油ストーブが倒れたらバケツの水で火が消せる」と言い切った際は、東京消防庁から「水は禁物」と反論された。しかし公開実験の結果、「手帖」が正しいと証明された。花森は「商品テストは生産者に、いいものだけを作ってもらうための、もっとも有効な方法なのである」と記している。

     「一●五厘」とは、戦中のはがきの値段。出征時に上官から「貴様らのかわりは一●五厘で来る」とどなられ、命の価値を理不尽に決められたことへの激しい憤りもつづる同書は、読売文学賞に輝いた。花森は軽妙な文章も得意とし、『逆立ちの世の中』『風俗時評』『暮しの眼鏡』(いずれも中公文庫)など肩の凝らないエッセーも出している。(森重達裕)

     (●は「浅」の右側だけ)

    ドラマ化で多数刊行

     ドラマ化に合わせ、この3、4月だけでも鎭子と花森について多くの書籍が刊行された(文庫化、新版含む)。

    『大橋鎭子と花森安治』(『歴史読本』編集部編、中経の文庫)

    『大橋鎭子と花森安治 美しき日本人』(長尾剛著、PHP文庫)

    『大橋鎭子と花森安治「暮しの手帖」二人三脚物語』(塩澤実信著、北辰堂出版)

    『花森安治の編集室』(唐澤平吉著、文春文庫)

    『大橋鎭子 花森安治と創った昭和の暮らし』(三才ムック)

    『花森安治 美しい「暮し」の創始者』(KAWADE夢ムック)

    2016年05月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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