文字サイズ
    本にまつわる全国、世界各地の最新ニュースをお届けします。

    人気作のスピンオフ続々

    本家を知らない読者も

    • 『中間管理録トネガワ』で、部下の黒服たちの個性のなさにキレる利根川(c)福本伸行・萩原天晴・三好智樹・橋本智広/講談社
      『中間管理録トネガワ』で、部下の黒服たちの個性のなさにキレる利根川(c)福本伸行・萩原天晴・三好智樹・橋本智広/講談社

     「スピンオフ」がマンガ界で増殖中だ。人気作から派生した作品群のことで、作者も異なることが多いが、本家を知らない読者層までつかむ話題作も現れた。スピンオフはなぜ流行はやるのか。

    まさかのギャグ化

     最近のスピンオフブームを決定づけたのは『中間管理録トネガワ』(原作・萩原天晴、漫画・橋本智広、三好智樹、講談社)だろう。元ネタは福本伸行さんの人気マンガ『賭博黙示録カイジ』。カイジと凄絶せいぜつなギャンブル勝負を繰り広げた悪役、帝愛グループ幹部の利根川幸雄を主役に、まさかの「サラリーマンギャグ」に仕立てた。

     絵も、セリフ回しも、福本さんが描いたようにそっくりで驚く。名擬音「ざわ……」に象徴される個性的な福本タッチは、元々パロディーにしやすいのだが、本家はどう思っているのか。

    好きにやって!

    • 大槻のグルメ旅を描く『1日外出録ハンチョウ』(c)福本伸行・萩原天晴・上原求・新井和也/講談社
      大槻のグルメ旅を描く『1日外出録ハンチョウ』(c)福本伸行・萩原天晴・上原求・新井和也/講談社

     「面白いね、好きにやっていいよ!」というのが、福本さんの第一声だった。「実現すれば面白くなる自信はあったが、まさか好きにやっていいとまで言っていただけるとは思わなかった」と、本作を企画した講談社の村松充裕コミックDAYSチーム長(38)は語る。そればかりか、福本さんは自分から様々なネタを提案、『トネガワ』第1巻の巻末には、描き下ろし短編まで寄せてくれた。

     「福本作品には、強烈なキャラと世界観、確立された文法があるので、スピンオフにしやすい」と村松さん。すでに本家『カイジ』を知らない読者まで多数つかんでいるという。

     勢いに乗って生まれた第2弾が『1日外出録ハンチョウ』(原作・萩原天晴、漫画・上原求、新井和也、同)だ。『賭博破戒録カイジ』で卑劣ないかさま師だった大槻班長が“大人の休日”を満喫する、異色のグルメマンガになっている。

    原作者自ら

    • 『賭ケグルイ』(中央手前)とスピンオフ群。うち2作は本編の前日, [ruby: null], になっている
      『賭ケグルイ』(中央手前)とスピンオフ群。うち2作は本編の前日, [ruby: null], になっている

     ギャンブル好きの美少女が主人公の『賭ケグルイ』(原作・河本ほむら、作画・尚村透、スクウェア・エニックス)は、3本のスピンオフを展開中。本編原作の河本さんは、そのうち『賭ケグルイツイン』『賭ケグルイミダリ』の2本の原作も手がける。毎月、合計110ページ以上のネーム(コマ構成とセリフ入りの設計図)を描くという量産ぶりだ。

     「『双』と『妄』は、本編で描けない脇役キャラの違った側面に光を当てている」と河本さん。作画担当は違うが、原作者が同じなので、キャラの性格や世界観がぶれないのが強みだ。

     『賭ケグルイ』がデビュー作の河本さんは、実は福本ファン。『カイジ』に女の子がほとんど出てこないことがヒントになった。

     「いろいろなスピンオフは、好きな作品を一気に読みたい読者のニーズに合っていると思う。これだけマンガが多いと、読者の時間の奪い合いですから」

    本編に還元したい

     企画ものであるスピンオフは、作品としては一段低く見られがち。だが、そこにヒットの秘密があると村松さんは言う。「期待値のハードルが低いので、真剣に作れば評価されやすい」。商売的にも手堅い。一つヒット作が出ると、どんどんスピンオフがぶら下がるのが最近著しい傾向だ。

     一方、「スピンオフはいつまでも続かない」と村松さんはクールに分析する。「スピンオフで新たに掘り起こした読者を、本編に還元したい。当然ながら、オリジナルのヒット作を作る努力も、おろそかにしてはいけないと思っています」(編集委員・石田汗太)

    2018年08月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク