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    狩猟の世界 リアルに

    若い世代の増加 後押し

     野生動物を追い、仕留め、時に食らう。ハンターとしての人間の本能を駆り立てるような狩猟マンガが注目を浴びている。最近は、狩りに挑む若い世代も増加。ジビエ(野生鳥獣の肉)料理ブームとともに、こうしたマンガの影響を指摘する声もある。

    食害に悩む実体験

    • くくり罠にかかったイノシシの迫力に驚く千代丸とレモン(『罠ガール』より)
      くくり罠にかかったイノシシの迫力に驚く千代丸とレモン(『罠ガール』より)

     「自宅周辺でもイノシシやシカをほぼ毎日見る。食害を一農家の問題にしてはいけないと思っていた時、知り合いの編集者から依頼をもらったんです」

     月刊誌「電撃マオウ」(KADOKAWA)で『わなガール』を連載する緑山のぶひろさんは振り返る。わな猟免許を持つ女子高生・千代丸が友人のレモンとともに、様々な罠を使って、畑を荒らす動物を捕まえる物語。福岡県在住の緑山さんの実家はコメ農家で、自身もマンガ家をやりながら農作業を手伝う。鳥獣被害に苦しんだ末、わな猟免許を取るに至った実体験も反映されている。

     「個人の駆除には限界があるので、地域で協力して被害を減らしていく。そうした僕の理想を作品の中で描きたかった」

     千代丸とレモンはともに免許が取得できる最低年齢の18歳だ。JK(女子高生)と罠師の異色のかけ合わせは、命のやり取りを丁寧に描く狙いもあった。例えば、シカを解体するエピソードは1話分のページを割いた。食肉になる過程を見た2人の細かな心情を追うためだ。

     「たとえ駆除目的でも、殺して終わりにはしたくない。読者と同じ目線に立つには、素直な感情を表現できる若い女性キャラクターの方がよかった」

     環境省の統計によると、狩猟免許の所持者数は減少傾向だが、40代以下は実際に増えている。同省担当者は「狩猟を題材にしたマンガやテレビ番組の影響もある」と分析する。

     テレビアニメ化されている『ゴールデンカムイ』(野田サトル、集英社)もその一つだろう。明治時代の北海道と樺太(現サハリン)が舞台の冒険たんだが、ヒグマやトドなどの野生生物を狩り、アイヌ料理に舌鼓を打つシーンが登場し、狩猟マンガとしても楽しめる。

     日本古来のハンターを描いた作品も復刊され話題を呼んでいる。『マタギ』(矢口高雄、ヤマケイ文庫)は、秋田県北の山里で活躍した職業猟師「阿仁マタギ」が主人公。1970年代に発表された名作だ。

    試したレシピも

    • ハトを撃ち落とし、喜びをかみしめる岡本さん(『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』より)©岡本健太郎/講談社
      ハトを撃ち落とし、喜びをかみしめる岡本さん(『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』より)©岡本健太郎/講談社

     そもそもブームの火付け役となったのが、2011年に「イブニング」(講談社)で連載が始まった『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』だ。作者の岡本健太郎さんは岡山県在住。愛用の銃を手に野山を駆けめぐる日々を描く。こちらは『罠ガール』と違って食べるための狩猟だが、実はマンガのために始めたという。「エッセーマンガが好きで、いつかやりたかった。猟師という肩書が加われば、作品の趣も変わると思った」と岡本さん。

     野生動物との攻防だけでなく、自ら試したジビエ料理のレシピも紹介。ベテラン猟師の奥義や免許の取得方法なども解説し、狩猟のハウツー本のようだ。ただ、「狩猟の担い手を増やす意図はなかった」という。趣味で狩猟する人が増えていることも、「実際にやるのは大変。だからこそ読者の代わりにやってみる感覚だったので驚きです」。

     16年末に始まった新シリーズ『山賊ダイアリーSS』では、ヤスやモリを手に、海で魚突きなどにも挑んでいる。「動いている動物を捕って食べるのは、日本でできるアウトドアの最高峰。今年3回目の銃免許の更新でしたが、狩猟が面白いという気持ちは今も続いています」(木村直子)

    2018年12月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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