【回顧2018】マンガ 本年のベスト3作品を選ぶ

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「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」が東京・六本木の国立新美術館で8~10月に開催された。国立美術館でのマンガ家の個展は1990年の手塚治虫さん以来2人目。来年1月14日まで大阪文化館・天保山で巡回展を開催中。写真は国立新美術館会場で自作の前に立つ荒木さん ©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」が東京・六本木の国立新美術館で8~10月に開催された。国立美術館でのマンガ家の個展は1990年の手塚治虫さん以来2人目。来年1月14日まで大阪文化館・天保山で巡回展を開催中。写真は国立新美術館会場で自作の前に立つ荒木さん ©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 紙から電子へと、読む手段が変化しつつあるマンガ界。ネット発の話題作も増えてきた。編集者の斎藤宣彦さんと京都国際マンガミュージアム研究員の倉持佳代子さんに、この1年のベスト3作を挙げてもらった。コミック館編集部のベスト3もお届けする。

「多様性」社会と折り合い…斎藤宣彦さん(編集者)

 昨年刊の『漫画 君たちはどう生きるか』と芸人・矢部太郎さんによる『大家さんと僕』がベストセラーとなり、ツイッター発の『こぐまのケーキ屋さん』も単行本化されヒット。マンガ誌連載でない作品にも勢いを感じた1年だった。

 『モンストレス』は日米の女性作家が生んだダークファンタジーの邦訳。主人公マイカは内なる力の支配と、死んだ母の秘密を探る使命を帯び、旅を続ける。謎の力・克己・敵の追跡・流浪といった物語要素に人種差別や女性問題を取り込み、圧倒的な画力で大長編を展開している。

 『しまなみ誰そ彼』は連載誌休刊後にウェブ連載で完結。高校生のたすくは自分の性指向(ゲイ)を周囲に知られたのではと悩み、自殺を考える。ある女性にさまざまな人が集う「談話室」に導かれ、人間の「違い」がそのままにあってよいこと(多様性)の重要さに気づいてゆく。尾道を舞台に、重いテーマを、爽やかに描き抜いた佳作である。

 『メタモルフォーゼの縁側』もウェブ連載。BL(ボーイズラブ)好き女子高校生が、BLに興味をもってくれた75歳の老婦人にお薦め作品を伝えたり、一緒に同人誌即売会に出かけたりする。あたたかな交流、年齢差をものともしない、これは美しい「友情たん」だ。

 全くの偶然だが、3作とも世界や社会、身近な他人と折り合いをつけてゆく話であり、作者は皆女性であった。

モンストレス
モンストレス
しまなみ
しまなみ
メタモル
メタモル

〈1〉マージョリー・リュウ作、サナ・タケダ画、椎名ゆかり訳
   『モンストレス』(誠文堂新光社)
〈2〉鎌谷悠希『しまなみがれ』(小学館)
〈3〉鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』(KADOKAWA)

「ありそうでない」に注目…倉持佳代子さん(京都国際マンガミュージアム研究員)

 ありそうでなかった。そんな作品が相次いだ2018年。選んだ3作にはそれが通底している。

 『凪のお暇』は、28歳のOLの凪が空気ばかりよんでしまう自分を変えるべく、仕事を辞め、煩わしい人間関係を断捨離するところから始まる。特に今年に入ってからの展開は、少女マンガ史に残したい名場面が盛りだくさん。王子様だと思った相手が必ずしも自分らしい幸せをくれるとは限らない。そのことは他の少女マンガでも長らく語られてきたテーマだったが、凪の恋模様は現代らしい変化球があって新鮮だった。絵柄もどこか懐かしいのに今風。古くて新しい、このバランスが絶妙だ。

 ここ最近、宗教の実体験を描く2世信者の実録マンガの刊行が続くが、ふみさんの半自伝『愛と呪い』は特筆したい。実の父親からの性的虐待、それを目の当たりにしても笑うだけで助けてくれない家族。家族も学校の友達も宗教にのめり込んでいく環境で、主人公の少女は行き場をなくしていく。そんな最中、流れた酒鬼薔薇さかきばら事件のニュース。少女は狂気に魅了されるように……。90年代に生きた少女の痛々しい独白は、宗教の裏側を描くだけではなく、閉塞へいそくした当時の空気を確かに切り取る。

 『ギガタウン 漫符図譜』は、「鳥獣人物戯画」を模したキャラクターらが、四コマ漫画を通じてマンガ特有の記号表現を解説する。マンガ研究の見地からも興味深い一冊になった。

凪
愛と呪い
愛と呪い
ギガタウン
ギガタウン

〈1〉コナリミサト『なぎのおいとま』(秋田書店)
〈2〉ふみふみこ『愛と呪い』(新潮社)
〈3〉こうの史代『ギガタウン 漫符図譜』(朝日新聞出版)

芸大目指す熱さに圧倒…編集部

 美大生というと“変人”ばかりというイメージがあるが、日本の美術系大学の頂点たる東京芸大は、実は東大よりも狭き門。『ブルーピリオド』は、友人関係も勉強もそつなくこなしてきた男子高校生が、一枚の絵に心奪われ、表現の喜びに目覚めて芸大を目指す話。題材は決して目新しくないのに、スポーツマンガのような熱さに圧倒される。「好きなことは趣味でいい」と思っている人にお薦め。

 『彼女は宇宙一』は、自称・宇宙人の彼女がイケメンを翻弄ほんろうする表題作など6編を収めた短編集。登場するヒロインたちはみな潤んだ瞳を持ち、どこか行動が危うい。イラストレーターでもある作者の絵はポップでかわいいが、それを裏切る皮肉たっぷりのストーリーが魅力的。

 今年は50年前の1968年がやたら注目された年でもあった。過激化した学生運動の終焉しゅうえんを告げる「連合赤軍・あさま山荘事件」を12年かけて描ききった『レッド 最終章』が今年出たのは、偶然とは思えない。

ブルーピリオド
ブルーピリオド
宇宙一
宇宙一
レッド
レッド

〈1〉山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社)
〈2〉谷口菜津子『彼女は宇宙一』(KADOKAWA)
〈3〉山本直樹『レッド 最終章』(講談社)

55025 0 ニュース 2018/12/27 05:20:00 2018/12/27 05:20:00 2018/12/27 05:20:00 17日コミック回顧・JOJO展(エトキ別送) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181219-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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