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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『たべたいの』 壇蜜さん

    風呂で執筆、食の歳時記

    • 壇蜜さん(新潮社提供)
      壇蜜さん(新潮社提供)

     お風呂で書くという。「もともと長風呂で、時間を有効利用できないかと思って。そうしたら習慣になりました」

     日記なら10分、ブログは20分、本書のもとの「週刊新潮」連載中のエッセー「だんだん蜜味」は1時間弱。防水タブレットで執筆する。湯温は41度。「締め切りが重なるとゆであがってしまいます」

     が、賞味期限切れ牛乳への挑戦、携帯品のふりかけなど、食をめぐる文章は淡々とした中に、ほんのり愛がにじむ。おいしさにもだえ、グルメを堪能することもない。下戸であり、文章に酔うこともない。

     「何を食べてもうまいという味覚が、私の基本。それに、嫌ったり憎んだりするのは私の厳禁感情。食物への平坦へいたんな愛情が伝われば、という思いで書いています」

     テレビなど華やかな世界に生きているが、「仕事を離れたら極力忘れるようにして生き、たまに満員電車に乗る」という姿勢も、抑制された文章と関係がありそうだ。今ある場所を当然とは思わない。調理師免許を取り、冠婚葬祭の専門学校に通うなど29歳でグラビアアイドルになるまでは両親や多くの人に迷惑をかけたという思いがある。

     「だから、いつも自分の中に『あなたの本当はそうじゃないでしょ』という『グレちゃん』と呼ぶ、もう一人の自分がいる」のだそうだ。それが「傲慢ごうまんになってはおしまい」と戒める。

     「代わりなんかいくらでもいるんだよ」。何度も言われた言葉から想起するマーガリンへの思いなどを自作イラスト、俳句もまじえてつづる食の歳時記には、裸でいる時間の壇蜜さんの素の味がする。

     俳人の山頭火と同じ誕生日。アイスクリームの項の1句も、ひんやりとしていて、甘やかな情感が漂う。

     ・夏の夜 舌にあてがう 氷点下(新潮新書、720円)

     鵜飼哲夫

    2018年01月23日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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