文字サイズ
    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『生きて死ぬ力』 石上智康さん

    悟りの境地 易しく説く

    • 石上智康さん
      石上智康さん

     親鸞を宗祖とし、国内最大級の791万人の門信徒を抱える仏教教団、浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺)。その実務トップの総長である著者が、仏教の教えに基づく生き方を柔らかな言葉で紡いだ。

     <精いっぱい 努力し その時どきの 変化の すがたに とらわれ ない さからわ ない>

     <安心できない 死にたくない 愚痴無智ぐちむちの まま 「そのままで いい」 と聞かせていただき 安心する>

     81歳。集合住宅6階にある自宅と外との行き来には階段を使うほど元気だが、「いつ何があるかわからない。生きた証しを残したい」と筆をとった。「僭越せんえつですが、仏教の心を表した詩として、声に出して読んでもらえたら」と語る。

     1936年、東京・虎ノ門の光明寺に生まれた。戦時中は母の実家の富山県に疎開。住職の祖父は、檀家だんかから危篤の連絡が入ると、真夜中でも駆けつけ、枕元でお経を上げ、家族と最期をみとった。しかし、臨終を迎える人の不安を和らげる「枕経」の風習は戦後に廃れ、菩提ぼだい寺を持たない人も増えた。

     「僧侶や寺院と人々のつながりが薄れたのは、努力を怠った我々の責任。生きる支えとなる仏教の教えを、わかりやすく届けていかなければ」と強調する。

     著書では、2011年の東日本大震災についてもつづった。仙台市などの被災地を回り、傷ついた被災者の心に寄り添った。そんな体験を踏まえ、突然の災難に見舞われた人たちに、与えられた命を力の限り生きることの大切さを訴える。最近も、大阪北部地震があったばかり。不安の多いこの世で、強く、楽に生きるにはどうすればいいか。悟りの境地を易しく説く、現代版のお経のような1冊だ。

     (中央公論新社、1000円)

     木須井麻子

    2018年07月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク