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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『ベルリンは晴れているか』 深緑野分さん

    戦後の街 旅する二人

    • 深緑野分さん
      深緑野分さん

     「ミステリーは世界を反転させる能力がある」。歴史と謎解きを絡めた物語を好んで書く作家は、こう語る。「感情の落差に、伝えたいことがかみ合うと、人間の心に深くしみこむ」

     今作もそのスタイルは変わらない。舞台は、第2次世界大戦終了後のベルリン。戦火によって荒廃し、アメリカやソ連などが管理していたこの街で、歯磨き粉に仕込まれた毒で男が不審死を遂げる。男のおい訃報ふほうを伝えようと、17歳の少女・アウグステは、泥棒のカフカとともに旅に出る。

     戦争にまつわる重い過去を背負った2人。旅の中で目にするのは、復興に向けて動き出す人々の姿だ。闇市で多種多様な日用品や、食料をあがなう人々。瓦礫がれきの中からまだ使えるレンガを集め、店を再建する女性たち。「当時の映像を見ると、みんなすごく元気。主人公たちには重いものを背負わせていますが、当時の姿を風景として書きたかった。その日によって違う日常の過ごし方や、手触りを書くのが好きなんです」

     第2次世界大戦当時の欧州戦線という過酷な世界での“日常の謎”を描いた『戦場のコックたち』(東京創元社)は、直木賞候補となるなど注目を集めた。一方で「あの小説は無邪気に書いていた部分もあって、いまの私から見ると全然足りていない」とも。「当事者以外が(物語を)書くことには自覚的でありたい。覚悟して書かなければいけない」。取材を重ね、『コック』の4倍近い資料に当たってこの小説に取り組んだ。

     撮影は出版社の屋上で行った。著者の背後に広がるような青空を、物語のクライマックスでアウグステも眺める。「彼女の感情が一番動いた瞬間を、最後に置こうと決めていました」。その時、これまで読んできた物語の風景が色を変える。(筑摩書房、1900円)

     川村律文

    2018年10月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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