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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『村井邦彦のLA日記』 村井邦彦さん

    人を選ばず付き合う

    • 村井邦彦さん
      村井邦彦さん

     「翼をください」を作曲し、音楽プロデューサーとして松任谷由実やYMOを世に送り出した。目利きの才人が1992年からの米ロサンゼルス生活をつづった本書は、現地の気候、風土、食や地理を生き生きと伝えながら、豊かな教養も詰め込んだ。「LAのイメージはハリウッドぐらいで、それほど知られていないのでは。多くの民族が住み、お金持ちもいれば、田舎へ行けば馬に乗って歩ける。変なところなんです」と笑う。

     執筆の様子を、慶応大在学中に鍛えたジャズのアドリブ演奏になぞらえる。「テーマを決めたら、あとは思いつくままに書く」。ロス流の仕事着選びがテーマの回では、自分の服装を映画「太陽がいっぱい」の登場人物に例えると、数珠つなぎで名画の話題を書き連ねる。主題に戻るのは最後の1行だが、脱線した先にある知の冒険が痛快だ。

     驚くべきは広い交友関係。作曲家のミシェル・ルグランやジョン・ウィリアムズ、企業家では梁瀬次郎や牛尾治朗と、索引に掲載した人物だけでも150人を数える。20代から世界を飛び回った音楽ビジネスの成功者ならでは。「偶然に出会った人といろいろなことが起こりやすいタチなんだね」。本書も作詞家の山上路夫や伊藤アキラ、コラムニストの泉麻人ら多士済々が集う同人誌「てりとりぃ」の連載から生まれた。装丁を手がけた宇野亞喜良も同人だ。

     友人に恵まれるコツを「人を選ばず付き合うこと」と話した。恩人と追慕するのは、川添浩史。東京のレストラン「キャンティ」創業者だが、本書では「本業は国際文化交流」と説く。「ヒッチハイクする若者を誰でも車に乗せてあげるような人だった」。高校生だったユーミンを引き上げたプロデューサーの眼力は、人の縁を大切にする中から養われた。(リットーミュージック、2200円)

     清川仁

    2018年12月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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