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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『贋作 桜の森の満開の下/足跡姫 時代錯誤冬幽霊』 野田秀樹さん

    自分の言葉で書く

    • 野田秀樹さん
      野田秀樹さん

     言わずと知れた、日本を代表する劇作家にして演出家。新旧の話題作2本を収めた戯曲集には、野田作品のエッセンスが詰まっている。

     例えば、笑いを誘う言葉遊び。1989年初演で、今年再演された「贋作にせさく 桜の森の満開の下」はせりふの要所で韻を踏み、テンポよく物語を展開させていく。〈オレイにドレイとはキレイとはいえブレイ。〉というふうに。

     「若い頃、戦争を経験していない僕には重くて強いテーマは書けないと思った。テーマ主義への反発もあって、言葉遊びや、言葉を記号的に使って(演劇の)形や方法を見せることに徹した」

     劇中のやり取りはぶっ飛んでいるが、劇作家のメッセージは自然と立ち上ってくる。坂口安吾の小説を下敷きにして、王に命じられて仏像を作る芸術家を描いた。「いい作品」とは何か。素朴な問いかけは普遍的で力強い。

     もう一つは、昨年上演した「足跡姫 時代錯誤冬幽霊ときあやまってふゆのゆうれい」。亡き盟友、中村勘三郎へのオマージュだ。若い頃よりとんがった表現は和らいでいるが、こちらにも創作への思いは刻まれている。終盤、主人公の弟が畳みかけるせりふは愛にあふれていて胸を打つ。

     「消えていく彼の芸を残そうと思った。ただ、勘三郎を彷彿ほうふつとさせる人物を登場させるのは面白くない。歌舞伎の始まりの出雲阿国いずものおくにを取り上げることで、芸能論や演技論を語ってみようかな、と」

     ずっと大切にしているのは「自分の言葉で書くこと」。最後の場面ですべてを収束させるのは、今でも苦しい作業だという。分量にして原稿用紙5枚分。「それなりの仕上がりで手を打ちたいって思う時がある。だけど、“ウソ”を書いたら稽古が始まってから自分が苦しむのは分かっている。逃げずに自分を信じて書くしかない」(新潮社、1800円)

     淵上えり子

    2018年12月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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