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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『マーガレット・サッチャー』 冨田浩司さん

    「知的な真摯さ」貫く

    • 冨田浩司さん
      冨田浩司さん

     G20サミット担当大使を務める外交官が、2冊目の評伝を刊行した。前作はチャーチル。今回は「鉄の女」として知られる英元首相のサッチャーを取り上げた。

     「決してお仕えしたい上司ではない」と苦笑する。非常に厳しく、人間的な懐の深さがない。それでも、英国の政治社会にもたらした変革や、影響力の大きさを考えた。

     調べるうち、彼女が「知的な真摯しんしさ」を貫き、信念に基づいた政治指導を行ったことが見えてきた。また、公的部門の民営化などの政策は、新自由主義の観点から語られるが、人々の生き方や仕事への態度など、道徳的な問題として考えていた面があるという。「幅のある人だったということを知ってほしい」

     リーダーの力や首脳同士の人間関係が、外交に及ぼす影響の大きさについても、改めて実感した。首脳が国益を考えて行動するのは当然というものの、「いざという時には、話の合う合わない、意思疎通ができるか否かが非常に大きい」という。「メールやネットがどれだけ発達しても、人と人が話し合い物事を決めていくという部分は残る。結局、外交も個人が行うもの」

     イギリスには計7年間滞在。かの地の歴史や政治家に興味を持ち、伝記を読み始めると、学術書と娯楽作品の間に、事実に即した骨太の良い歴史書が多いと感じた。刺激を受け、自らも執筆を始めた。今作はイスラエル大使時代の週末などに執筆。外交官としても筆者としても、人間に対する興味が原動力だ。

     本書のもう一つのテーマは、政治の激動期におけるリーダーシップを考えること。ただ現代は、サッチャリズムの頃とは、状況が少し変わっているとも考える。「政治家だけでなく、国民それぞれが政治のあり方を考え、行動することが大事ではないか」(新潮選書、1400円)

     小林佑基

    2018年12月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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