評・尾崎真理子(本社編集委員)

『ある女の子のための犬のお話』 ダーチャ・マライーニ著、さかたきよこ画

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 幼少期に日本で過ごした作家はイシグロだけではない。

 作者はイタリアを代表する詩人、劇作家でもある。父は日本研究に名を残した学者フォスコ・マライーニ。第2次大戦中、極右政権への忠誠を拒んだ父と共に来日していた一家は、名古屋の強制収容所に置かれる。ダーチャは7~9歳。訳者の望月紀子氏によると、80代の現在まで、作者の主題は一貫して「牢獄ろうごくからの解放」だという。

 本書では人間に飼われる犬の受難と幸福が、短い物語として語られていく。作者が10年以上一緒に暮らし、老いて看取みとった4匹の犬も含まれる。ゴミ箱で見つけた純血種でないテリヤをはじめ、それぞれ生い立ちは恵まれない。しかし犬の気性、個性を見抜き、分かちがたい信頼の時間を過ごす満足感も、簡潔な文章の行間から立ちのぼる。

 瀕死ひんしの状態でも〈犬には犬として生から死へ移行する時間があり、その時間は尊重されなければならない〉。それが作者の考え方。人間に依存せずには生きていけぬ野性を飼うとは、どれほどの責任を負うことか。どれほど覚悟が必要か。胸が痛むほど教えられた。

 未来社、1800円

無断転載禁止
2589 0 書評 2018/01/15 05:21:00 2018/01/15 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180109-OYT8I50027-1.jpg?type=thumbnail

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