『代表の概念』 ハンナ・ピトキン著

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代表の概念(15日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影
代表の概念(15日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影

支配者か国民の下僕か

 日本国憲法の前文は、日本国の権力は「国民の代表者がこれを行使し」と述べている。権力を行使する者と言えば、一般の公務員や裁判官も含むはずだが、第四十三条ではとりわけ、「全国民を代表する選挙された議員」が衆議院と参議院を組織すると定められている。議会を媒介とする代表制に基づいたデモクラシーを、日本国民は選んだという趣旨である。

 しかし、「全国民」の利益と地元の意見とが衝突する場合、議員はどちらを優先すべきなのか。地元の意見と言っても、そのなかの誰の意見を反映させるべきか。また、前の選挙から長い時間がち、国民の意志を判断できないときに、「代表者」たる議員が自由に裁量を働かせて行動するのは許されるのか。さまざまな疑問がわいてくる。

 これは個別の状況判断ですませていい問題ではなく、そもそも「代表」とは何であると考えるかという、根本の問いに関わってくる。本書はアメリカの政治理論研究者が約五十年前に著した書物であるが、その分析は、政治エリートの劣化とポピュリズムの傾向が盛んに憂慮されるいま、さらに大事なものになってきた。

 「代表」がいったん権力を預かったら万能の支配者になるのか、それとも国民の意向に下僕のように仕えるのが「代表」なのか。そうした論点をはじめとして、政治思想史において「代表」の概念はさまざまに論じられてきたが、すべてを包括する正解などはない。むしろ、われわれ一般人が「代表」にいかなる役割を求めているのかを吟味しながら、いまある代表制度をよりよいものにしてゆくこと。この本は、その探求へと進むための地図にほかならない。

 日本の場合、西洋語のリプレゼンテーションと訳語「代表」との違いという厄介な問題がある。その点にも配慮した達意の翻訳によって、現代政治学の古典に親しめるようになったことを、市民の一人として喜びたい。早川誠訳。

 ◇Hanna Fenichel Pitkin=1931年ベルリン生まれ。カリフォルニア大バークレー校名誉教授。

 名古屋大学出版会 5400円

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3966 0 書評 2018/01/29 05:25:00 2018/01/29 05:25:00 代表の概念(15日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180122-OYT8I50030-1.jpg?type=thumbnail

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