『議院内閣制――変貌する英国モデル』 高安健将著

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『議員内閣制』(19日午後4時44分、東京都で)=米山要撮影
『議員内閣制』(19日午後4時44分、東京都で)=米山要撮影

首相の独走防ぐ改革

 議院内閣制は、きわめて強大な権力の集中を可能にする制度である。もちろん現実には、たとえば日本でも首相が国会での野党による攻撃に頭を悩ませ、与党内から造反が起こる場合もあるから、集権化がいつも働いているとは限らない。だが意思形成の手順に関するかぎり、立法権と行政権とが結合した巨大な権力を、政府は持つことができる。

 近代の英国において、絶対王政のもとで拡大した国王の権力を議会が奪うことを通じ、議会が政府を作りだす議院内閣制が始まった。そうすると、政府が民意から離れて暴走したり、少数派の権利を抑圧したりするのを防ぐ手立てが必要になるだろう。そこで、国民の政治家への信頼と政治家の側の自己抑制の双方を重んじ、二大政党の交代をはじめとして、政治勢力のあいだのバランスを維持する慣習が定着した。

 高安健将がこの本で詳細に紹介する内容を見ると、一九九〇年代の日本が英国の議院内閣制を重要なモデルとして政治改革を行った試みには、重大な偏りがあったとわかる。たしかに首相の官僚機構に対する権力は大きく強化され、選挙による政権交代も容易になったとは言える。しかしその反面、集権化が行き過ぎるのを防止しうるような、議会内の対抗勢力をしっかり育てるしくみは整っていない。

 しかも英国では、やはり近年、首相の権力の拡大が見られるのと並行して、議会による政府の監視や、司法部の機能が強められるようにもなってきた。「大統領化」と呼ばれる政府中枢の権力の強化は、先進国の政治にいま多く見られる現象であるが、その独走を押しとどめるための改革も進んでいる。そうした英国の試みに本書は注意をむけている。

 昨今はヨーロッパ諸国の政治に対する日本人の関心が薄れてきたと言われることが多い。だが日本の憲法論議や政治の動きを考える上でも、英国について知ることは、まだまだ重要なのである。

 ◇たかやす・けんすけ=1971年、東京都生まれ。成蹊大法学部教授。著書に『首相の権力』。

 中公新書 900円

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14397 0 書評 2018/04/02 05:24:00 2018/04/02 05:24:00 『議員内閣制』(19日午後4時44分、東京都で)=米山要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180326-OYT8I50031-1.jpg?type=thumbnail

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