評・宮部みゆき(作家)

『炎と怒り』 マイケル・ウォルフ著 『その情報、本当ですか?』 塚田祐之著

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『炎と怒り』(手前)と『その情報、本当ですか?』
『炎と怒り』(手前)と『その情報、本当ですか?』

不愉快な情報は誤り?

 トランプ大統領は本当によく閣僚やスタッフをクビにする。本書の巻頭にある登場人物表のなかだけでも、辞任・解任の文字がついた人たちが十名いる(ちなみに「FIRE」には、口語的には「解雇する」の意味もある)。

 原著は発売直後から全米ベストセラーとなり、我が国でもニュース番組やワイドショーで連日話題になった。だから待望の邦訳版である本書もそういう番組をたときのノリで手にしたのだけど、ある人物や組織がどれだけバカであるかを熱心に語る本は悲しい。それと、れっきとしたジャーナリストである著者が、「トランプのホワイトハウス」を取材する自身を「壁にとまったハエ」にたとえているのも悲しい。トランプ一家の仕切る政権内があまりにも混乱しているので、誰に取材許可を取り、どこまで書いていいかを確認することができず、結果的に見聞きしたことを何でも書けて、だから本書には臨場感あふれる貴重な情報も盛り込まれているはずなのに、それはハエのつぶやきなのか――

 トランプ大統領はしばしば、自身に対する批判や政権にとって不利な事実の報道を「フェイクニュースだ!」と怒る。本書でもその怒りっぷりが活写されていて下世話に面白いのだが、この人は本気で「自分にとって心地よい情報は正しく、不愉快な情報は誤っているのだ」と思い込んでいるのかしらと疑い始めると怖くなる。情報の取捨選択を感情で左右されてしまうのは、米大統領でも私みたいな何の権力もない個人でも同じなの? 人間はそれほど普遍的に弱いもの? 関根光宏、藤田美菜子他訳。

 個人は情報選択を間違っても世界に損害を与える気遣いはないけれど、自分の人生を破壊してしまう危険はある。そこで『その情報、本当ですか?』を。ジュニア向けではあるが、現場の実体験をもとに報道の仕組みを解説して充分に読み応えがある。こちらの著者は「クローズアップ現代」などを手がけた元テレビマンだ。

 ◇Michael Wolff=米国の著名ジャーナリスト

 早川書房 1800円

 ◇つかだ・ひろゆき=元NHK報道局制作ディレクター。

 岩波ジュニア新書 900円

無断転載禁止
15326 0 書評 2018/04/09 05:25:00 2018/04/09 05:25:00 『炎と怒り』(手前)と『その情報、本当ですか?』 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180402-OYT8I50027-T.jpg?type=thumbnail

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