評・本郷恵子(中世史学者・東京大教授)

『AIvs.教科書が読めない子どもたち』 新井紀子著

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『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(26日、社内で)=萩本朋子撮影
『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(26日、社内で)=萩本朋子撮影

意味を理解する大切さ

 過去のできごとを考えるのが専門で、未来に向かう進歩や変化については、指をくわえて見ているばかり。それではいけない、最新の話題にも触れてみようと本書を手にとった。著者は「東ロボくん」と名づけたAI(人工知能)を育てて東大入試に挑戦するというプロジェクトのリーダーをつとめた数学者。2011年の開始以来、東ロボくんは成長を続け、16年のセンター模試では偏差値57・1を獲得、有名私立大学にも合格可能なレベルに達した。

 だがAIは計算機だから、論理・確率・統計という数学的な方法しか使うことができない。「意味」を扱うことができないのである。そのために現在の技術の延長では、偏差値65の壁を超えることは不可能だという。

 しめしめ、やはり言葉や文脈を理解するのは機械には無理であろう――と、私はほくそえんだのだが、実はここからが怖ろしい。AIが偏差値57・1ということは、AI以上に「意味」がわかっていない多数の若者がいるわけだ。著者は東ロボくんを育てた経験をもとに、中高生の基礎的読解力の調査を実施した。その結果は、「中学生の半数は、中学校の教科書が読めていない」!!

 私はかねがね「歴史は暗記物」という受験の常識らしきものが不思議だったのだが、その謎が解けた。古代から現代までを、紙幅に制限のある教科書に収めようとすると、どうしても説明的で複雑な記述となる。厄介な文章を読み解いて「歴史の流れ」を理解するのではなく、固有名詞とそれらの結びつきを順番に暗記していくことで、試験をこなしている一定数(あるいは大多数?)の学生がいるのだろう。意味がわかっていなければ暗記の効率も悪く、歴史の勉強はただの苦役になってしまう。

 AI研究から人間の知性の構造へと迫る本書の道筋は、まことに明晰めいせき。問題の本当のありどころとその深刻さを教えてくれる。

 ◇あらい・のりこ=国立情報学研究所教授。専門は数理論理学。著書に『コンピュータが仕事を奪う』など。

 東洋経済新報社 1500円

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15398 0 書評 2018/04/09 05:26:00 2018/04/09 05:26:00 『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(26日、社内で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180402-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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