『「在宅ホスピス」という仕組み』 山崎章郎著

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『「在宅ホスピス」という仕組み』(新潮選書)(1日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影
『「在宅ホスピス」という仕組み』(新潮選書)(1日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影

眠るように旅立つには

 母が最後の入院をしているあいだに、いろいろなものが不要になっていった。家を出るときに身に着けていたコートや靴、そのうちにガウンやスリッパ、食事用の箸まで。本来の持ち主が二度と使うことのない品物を数え、すべてをまとめて病院を去る日がくることを恐れた。帰りたいのに、帰らねばならないのがこわい。回復するためではない入院は矛盾に満ちている。自分らしくあるための最後の局面を、最大の力を発揮できるフィールドで迎えられればと、誰もが願うことだろう。

 著者は、病院での終末期医療に疑問を感じて、ホスピス(緩和ケア病棟)を立ち上げた。そこでは最後まで尊厳を持って生きることが可能で、家族からも「自分も死期が迫ったらここに来たい」と高く評価された。それでも多くの患者さんが「本音を言えば、家に居たかった」と口にするという。

 どんなに環境が整っているホスピスでも、患者さんにとっては「アウエイ」であり、たとえ問題があっても自宅は「ホーム」である。それならばホスピスチームの方から出向けばいい。著者は地域の中でホスピスケアを提供する「ケアタウン構想」の実現に動いた。現在は東京都小平市で、24時間対応の訪問医療・看護、ケアマネージメント等から成る「ケアタウン小平チーム」を率いている。

 本書は「在宅ホスピス」に必要な仕組みについて、医療のありかただけでなく、患者さん自身・家族(遺族)・地域・社会制度等、あらゆる側面から論じたものである。どのページにも、現場の実践に裏打ちされた、具体的な方策や提言が示されている。そして、自身の死や身近な人の死に向かい合わねばならない時、次の言葉を知っておくことが力になるだろう。「適切な緩和ケアができれば、死ぬときに苦しむことは、まずありません。眠るがごとく旅立てる場合がほとんどですよ」

 ◇やまざき・ふみお=1947年生まれ。在宅緩和ケア充実診療所ケアタウン小平クリニック院長。

 新潮選書 1300円

20676 0 書評 2018/05/14 05:25:00 2018/05/14 05:25:00 『「在宅ホスピス」という仕組み』(新潮選書)(1日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180507-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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