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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・服部文祥(登山家・作家)

    『極北へ』 石川直樹著

     17歳の少年は、はじめての海外一人旅でインドに行き、学校生活の延長に自分の進むべき人生を見いだせなくなる。世界中を旅して写真を撮り、文章を書いていくためにはどうしたらいいか。

     ある巡り合わせからユーコン川をカヌーで下り、アラスカのデナリ気象観測隊に潜り込んで登頂。以降、極北の地は、少年が写真家石川直樹に成長していく柱のひとつとなっていく。

     アラスカ、カナダ、グリーンランド、ノルウェー、スヴァルバール諸島。毎年極北の町を、撮る以外に目的を持たず、現場での感覚優先で巡り歩く。

     極北の何が写真家をそこまでき付けるのか。膝を打つような明確な答えは記述されない。白夜と極夜という二つの季節が繰り返す極北は、グローバル化の影響で陸地が縮小し、伝統がむしばまれ、観光地として消費される。

     だが細切れではない大きな時間に生きる人々は、時の流れに身を委ね、悔いなく生きている。極北を旅するとき、自分もその流れの中に入り込めることを写真とエッセイで報告する。

     毎日新聞出版 1600円

    2018年05月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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