評・戌井昭人(作家)

『庭』 小山田浩子著

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「庭」(7日、本社内で)=西孝高撮影
「庭」(7日、本社内で)=西孝高撮影

不穏な空気 奇妙な余韻

 『庭』は、二〇一四年に「穴」で芥川賞を受賞した小山田浩子さんの短編集で、一三年に発表した「うらぎゅう」から、様々な文芸誌に発表した順に十五編が時系列で並んでいる。

 それぞれの作品は、なんだか不穏な空気が漂っているけれど、大きな爆発もなく、湿っぽさもない、むしろ乾いているのだが、不穏がジリジリ迫ってきて、知らぬ間に、どこかにストンと落ちていく感じだ。かといって収まりよく落ちていくわけでもないので、奇妙な余韻が残る。

 登場するのは、虫や動物がたくさん。クモ、犬、カエル、かに、どじょう、ヤモリ。こけや彼岸花など植物も出てくる。もちろん人間も出てくるけれど、人間も生き物の一部として、虫や動物と同等に扱われている。だからといって小うるさいナチュラリスト風情もないので、逆に自然が真に迫ってくる。

 そこにフォークロア的な、奇妙な話が入り込んでくるのだが、その話は解決したのかしなかったのか、よくわからない。つまるところ、人間も虫も動物も自然も不可解なことだらけで、生きている以上不可解からは逃れられないのかもしれないと思えてくる。

 答えを出すことが正しいわけでもない、むしろ答えなんて無いのかもしれない。さらに折り目正しいことを言ったり、教訓をぶったり、変にまとめようとしないところが小山田さんの魅力だ。たぶん裏のメッセージとかもない(あったらゴメンなさい)、裏も表も無い世界、人間も虫も動物も海も空も全部つながっている。だからこそ読者を日常からズレたところに導いてくれる。

 さらに、そのズレに生活が入り込んでくるからスリリングなのだ。最後の幼い娘と母のやりとりを描く「家グモ」には驚いた。わたしは、小山田さんのてらいのない作品の題名が好きだ。しかし、その衒いのないところに落とし穴があったりして、そこがまた危険な魅力だったりする。

 ◇おやまだ・ひろこ=1983年、広島県生まれ。作家。「工場」で新潮新人賞を受けてデビューした。

 新潮社 1700円

無断転載禁止
21746 0 書評 2018/05/21 05:27:00 2018/05/21 05:27:00 「庭」(7日、本社内で)=西孝高撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180514-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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