評・森健(ジャーナリスト)

『誰もが嘘をついている』 セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ著

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「誰もが嘘をついている」(7日、本社内で)=西孝高撮影
「誰もが嘘をついている」(7日、本社内で)=西孝高撮影

分析データが示す真実

 ネットには本音があるというのは、どうも本当のことらしい。2年前の米大統領選挙。人種差別的な発言を繰り返すドナルド・トランプ氏が勝つと予想した識者はまれだった。だが、彼が勝ち抜く兆候はあったと本書の著者は言う。

 根拠は、多くの人が検索するグーグルでの検索履歴だ。ヒラリー・クリントン候補が勝つと見込まれていた中西部の重要州でも「トランプ」を検索する人のほうが多かったうえ、オバマ前大統領の選挙の頃から、黒人差別を示唆する検索結果が多く出ていたからだ。

 グーグルの元データサイエンティストである著者は検索データなど膨大なデータを分析すると「社会の真の姿」が見えると本書で示した。

 人目をはばかる性的な事柄も、検索では直接問える。データを分析すると、女性がセックスレスや性器に関して悩んでいることや統計以上に同性愛の人がいるだろうことが示された。

 全米国民の納税記録の分析からは、貧しい子供が豊かになる可能性は、地域によって異なることが明らかにされる。暴力的な映画が公開された週末の、時間ごとの犯罪データからは、攻撃的な若い男性が映画館に行くため、犯罪率が増加ではなく低下することが示唆された。

 用語分析も興味深い。借金希望者が融資を求め、投稿する融資サイト。分析すると、借金の返済率の高かった人には「税引き後」「最低支払額」など一定の金融知識のある言葉が並び、低かった人は「神」「約束します」「病院」など慈悲心に訴える言葉が多かったという。

 データからは犯罪や自殺も予測しうる。だが著者は犯罪が未遂のうちは特定の個人を警戒することは「踏みとどまるべき」とし、代わりに自殺や犯罪を予防する対策をとるべきとした。扱い方次第でデータは市民を縛るように転じうることを著者は熟知しているからだろう。

 データ時代に生きる私たちにとって、本書はその裏側を知る本でもある。酒井泰介訳。

 ◇Seth Stephens‐Davidowitz=グーグルのデータサイエンティストを経てニューヨーク・タイムズ寄稿者。

 光文社 1800円

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21669 0 書評 2018/05/21 05:24:00 2018/05/21 05:24:00 「誰もが嘘をついている」(7日、本社内で)=西孝高撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180514-OYT8I50003-T.jpg?type=thumbnail

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