『ザビエルの夢を紡ぐ 近代宣教師たちの日本語文学』 郭南燕著

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『ザビエルの夢を紡ぐ』(14日、本社で)=吉川綾美撮影
『ザビエルの夢を紡ぐ』(14日、本社で)=吉川綾美撮影

日本人の魂への郷愁

 キリスト教の世界宣教を目指して結成したイエズス会のフランシスコ・ザビエルは、1549年に鹿児島に上陸、日本における宣教の先駆者となった。彼は「日本人より優れている人びとは、異教徒のあいだでは見つけられない」と語り、「もし私たちが日本語を話すことができれば、多くの人びとが信者になることは疑いありません」と異言語克服に情熱を傾けた。

 その夢は17世紀初頭の禁教令で途絶えたかに見えたが、キリシタン禁制の高札が撤廃された1873年以後、再び多くの宣教師が来日し、3000点を超える日本語の書物を残した。本書は明治、大正、昭和の時代の日本文化に大きな影響を与えた4人の宣教師(A・ヴィリオン、S・カンドウ、H・ホイヴェルス、G・ネラン)の生涯を素描し、日本語で書かれた彼らの著作を紹介したものである。

 「帰る位なら来はしませんよ、私は日本の仏になるんです」、日本で没したヴィリオン神父の『日本聖人鮮血遺書』は、もっとも広く読まれたキリシタン殉教史である。作家の獅子文六が日本語を教わったというほど見事な文章を書いたカンドウ神父は、「臨終の床にあって神に感謝し、喜びをのべ、従容として死んで行く人びとであります。……自分はこのような美しい魂を見出みいだしたこの日本を愛せずにはいられない」と、日本人の美しい魂にかれていた。『細川ガラシア夫人』を書いたホイヴェルス神父、新宿歌舞伎町で宣教スナックを開き、遠藤周作の小説『おバカさん』のモデルとして知られるネラン神父。彼らはまさに、ザビエルの夢を数世紀もの時の隔たりを経て紡いだ存在なのだ。

 中国出身で日本語文学を研究する著者の狙いは、「卓越した宣教師」のまなざしを通して、失われた日本人の魂への共感と郷愁を呼び起こすことだったのかも知れない。読み返しているうちに、現代日本の喪失感を、痛切に感じさせられた書である。

 ◇かく・なんえん=1962年中国・上海生まれ。2008~17年国際日本文化研究センター准教授。

 平凡社 4000円

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22933 0 書評 2018/05/28 05:25:00 2018/05/28 05:25:00 『ザビエルの夢を紡ぐ』(14日、本社で)=吉川綾美撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180521-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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