評・宮下志朗(仏文学者・放送大客員教授)

『王政復古期シェイクスピア 改作戯曲選集』 鹿児島近代初期英国演劇研究会訳

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「王政復古期シェイクスピア改作戯曲選集」(18日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影
「王政復古期シェイクスピア改作戯曲選集」(18日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影

崇敬ゆえの書き換え

 シェイクスピア没後の「ピューリタン革命」の時代、商業劇場が閉鎖され停滞していた演劇は、「王政復古」と共に復活する。少年俳優演じる女形に代わる女優の出現、照明・背景の活用等、新たなスタイルで。そして、勃興するブルジョワジーの合理主義の影響などを受けて、シェイクスピアは改作される。当代有数の詩人たちが、「神のごときシェイクスピア」への崇敬ゆえに、作品を書き換えた。本書は、そうした改作四編の本邦初訳である(原作は『じゃじゃ馬ならし』『リア王』『リチャード三世』『ヴェニスの商人』)。

 たとえば、ネイハム・テイト『リア王一代記』では、王の末娘コーディリアとグロスター公の嫡子エドガーの恋愛という要素を加えることで、リア王の末娘への癇癪かんしゃくやエドガーの変装もわかりやすくなる。リア王もコーディリアも死なず、コーディリアはエドガーと結婚するというハッピーエンド。主役たちの死と葬送行進曲という、原作の残酷かつ不条理な悲劇性とは反対の甘美な筋書きもありだと思う。悪役として差別されるユダヤ人シャイロックに感情移入して、『ヴェニスの商人』という「喜劇」に首をかしげる向きは、ジョージ・グランヴィル『ヴェニスのユダヤ人』を読んでみよう。ここでの悪は、金融都市ロンドンにはびこる金銭欲、オペラのさわりのような仮面劇が挿入されるのも趣があってよろしい。

 一九世紀半ばまで、『リア王』はテイト版で上演されていたのだ。しかし原典尊重主義の台頭により、テイトは改悪者の代名詞になったという。「有力な支流」が流入してこそ古典は「大河」になるのだから、むげに「支流」をしりぞけるなかれという、外山滋比古さんの言葉を思い出した(『異本論』)。改作もまた、古典ならではの現象なのだ。とにかく、どれも読んで面白い。紀要類に発表された翻訳が、こうして出版されたことを心から祝福したい。シェイクスピア・ファンの必読書。

 ◇訳者は鹿児島近代初期英国演劇研究会の輪読会メンバーで、同研究会代表の大和高行・鹿児島大教授ら5人。

 九州大学出版会 6000円

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24042 0 書評 2018/06/04 05:23:00 2018/06/04 05:23:00 「王政復古期シェイクスピア改作戯曲選集」(18日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180528-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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