評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

『WHAT HAPPENED 何が起きたのか?』 ヒラリー・ロダム・クリントン著

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「WHAT HAPPENED 何が起きたのか?」ヒラリー・ロダム・クリントン(17日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影
「WHAT HAPPENED 何が起きたのか?」ヒラリー・ロダム・クリントン(17日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影

正義感の塊が直面した壁

 ヒラリー・ロダム・クリントンが一体何者なのかということについて、私はまるでいぶかしむ余地を持たない。彼女を四半世紀近くも見てくれば、そうでなくとも2016年の大統領選での数々の討論会を聞いてさえいれば、ヒラリーが何者なのかという問いは出てこないはずだ。けれども、人びとは繰り返しその問いを発してきた。

 不器用で、真面目で、自制心が強く、優しくしばしばおせっかいで、正義感の塊。そうした人物像を、彼女は隠そうとしたわけではなかった。彼女の戦いの告白本である本書には、私が思った通りのヒラリーが詰まっている。正直すぎるほどに正直につづられた一文一文。正義感にあふれ、自己正当化をする一方で、つねに公正でありたいとする願望。

 勝利のため、何が彼女に足りなかったのか。小さなことを挙げればきりがない。もう少し若くて、失言もなく、もっとずるければ。けれども、そうした細かい点はどんな候補者にもある個性や弱点のうちだ。

 より本質的な問題は何だったか。本書でヒラリーは、それを「女性」であったことに求めている。女性なのに手を挙げ、はっきりと意見を言ったことに。確かにトランプとの選挙人獲得数の差をひっくり返すには十分な理由だ。だが、本書を読めばもっと深く分かる所がある。

 それは、ヒラリーが正直で、正義感の強い女性だったことだ。男性のリーダーは自然に生まれる。多くの場合、正義感より先に、リーダーのたたずまいがあるものだ。女性は違う。女性の影響力の類型にはリーダーが含まれてこなかった。女性がそうした不利さを乗り越えて立候補するとき、人びとはそこに何らかの暗黒面や曲がった欲望の動機を見たがる。

 ヒラリーの立候補の動機は、明確に正義感だった。個人や政策に好き嫌いはあるだろう。ただ、その正義感を理解できなかった人々が、彼女を遠ざけ、足を引っ張ったのである。高山祥子訳。

 ◇Hillary Rodham Clinton=上院議員、国務長官などを歴任。ビル・クリントン元大統領夫人。

 光文社 2000円

38467 0 書評 2018/09/03 05:24:00 2018/09/03 05:24:00 「WHAT HAPPENED 何が起きたのか?」ヒラリー・ロダム・クリントン(17日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180827-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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