『ネット狂詩曲 吃瓜時代的児女們』 劉震雲著

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書評(14日午後8時2分、本社で)=守谷遼平撮影
書評(14日午後8時2分、本社で)=守谷遼平撮影

どす黒いユーモア

 「小説」の語源は古代中国の「稗官はいかん」である。稗官は、庶民が町や村で拡散するあやしげな噂話うわさばなし、取るに足らぬ風説(小説)を採集し、為政者に報告する下級役人のこと。噂はあなどれない。今も昔も、中国の庶民は、為政者の公式発表より、ちまたの噂を信じる。今はネットの時代だ。中国共産党の高級幹部のゴシップなど、政府に不都合な噂も、SNSで瞬時に拡散する。

 本書は、人気作家の劉震雲が、現代中国のえげつない内実をえぐり出したベストセラー小説である。近年のネットで話題になった怪事件の数々を、小説として再構成した怪作だ。

 物語は、田舎の若い女性・牛小麗ニュウシャオリーが、気弱な兄のために借金して嫁を買うところから始まる。結婚直後、嫁は逃げ出す。牛小麗は執念で追跡の旅に出る。旅先で困窮した彼女はわなにひっかかり…。野心家の常務副省長・李安邦リーアンバンには、高校生の一人息子がいた。息子は不良で、無免許運転で事故を起こす。同乗の売春婦は下半身に何も身につけていない状態で車から投げ出されて死亡。李安邦は警察に事件のもみ消しを頼むが…。某県の道路局長・楊開拓ヤンカイトゥオは、橋の倒壊現場で写真を撮られた。庶民は、彼が身につけていた高級ブランドの腕時計に着目。ネットで炎上。庶民はネットで、楊開拓の過去の写真を調べ、彼が役人の給料では買えない高級腕時計をいくつも持っていることを暴く。汚職を疑われた楊開拓は…。

 「訳者あとがき」の解説のとおり、登場人物にはそれぞれモデルが実在する。実際に起きた数々の事件を下敷きに一つの小説にまとめあげた作者の構想力は、たいしたものだ。

 本書に夢や感動はない。劉震雲はユーモア作家だが、本書のユーモアはどす黒い。ネットの事件で盛り上がる庶民の姿にも、爽快感はない。人間のドロドロした欲望、罠、転落、悪あがきの生きざまが、これでもか、と描かれる。あえて言う。これぞ小説である。水野衛子訳。

 ◇りゅう・しんうん=1958年、中国河南省生まれ。邦訳作品に『ケータイ』『温故一九四二』など。

 彩流社 2600円

無断転載禁止
42180 0 書評 2018/10/01 05:23:00 2018/10/01 05:23:00 書評(14日午後8時2分、本社で)=守谷遼平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180925-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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