評・加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

『上皇の日本史』 本郷和人著

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 日本史は隠微だ。小学校で歴史を学びはじめてから、疑問は尽きない。なぜ藤原道長や豊臣秀吉は手っ取り早く自分が天皇になろうとしなかったのか。院政の初期、なぜ摂関家の藤原氏は実権をあっさり上皇に渡したのか。北朝を擁する足利幕府が、武力を失った南朝を延命させた理由は。「院」と「上皇」の違いは。親や祖父である上皇を黙らせて自分で政治をやろうとした天皇は、いなかったのか。外国にも院政はあったのか。

 本書を読み、疑問が氷解した。著者は日本史の機微を史料を駆使して説明する。日本では地位より「人」が先、「輝ける古代」という幻想、など本質を突く指摘は痛快だ。周辺的な知識も楽しい。織田信長は、天皇の生前退位が久しくなかった時代に生まれ「上皇」を知らなかった。私は江戸時代の天皇や朝廷は貧乏だと思っていたが、史実では当時の朝廷は豊かで四十~五十万石の大名程度の収入があった、等々。

 本書を読み、数十年来のモヤモヤ感が晴れた。古代から今日まで、この国の暗黙知的な設計思想を明快な言葉で説明する快著である。(中公新書ラクレ、880円)

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42767 0 書評 2018/10/08 05:21:00 2018/10/08 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181001-OYT8I50035-T.jpg?type=thumbnail

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