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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・宮下 志朗(仏文学者・放送大客員教授)

    『方言でたのしむイソップ物語』 安野光雅著

     「イソップ物語」は一五九三年に、日本で最初に翻訳・出版されたヨーロッパ文学。宣教師が日本語を学び、布教するための読本として、天正遣欧使節が持ち帰った印刷機・活字で刷られた。音読すると、「おじゃる」「おりゃる」といった口調が心地よい。

     この「キリシタン版イソップ」を愛読している画家の安野さん。みんなで各地の方言に翻訳したらと提案したものの、結局は自分ですることに。かくして、故郷の津和野弁などで「翻案」した楽しさ満点の本が生まれた。第一話「おおかみと羊のたとえの事」は、「あるところのね、川のそばにね、ひつじがきて、そいからおおかめもきて川の水を飲もうとおもうたらしいんじゃてー。狼は川上におってから、ほいから、羊の子は川の下のほうにおったんといね」と、なんともいい感じで始まる。自由奔放な安野さん、「からすきつねの事」などの脱線ぶり、「下心」という寓意ぐうい・教訓の変身ぶりが愉快だし、挿絵も無論ユーモアたっぷりだ。

     「潜伏キリシタン」遺産が世界遺産に登録された。安野版イソップをきっかけに、原典の天草版イソップにも注目が集まらんことを!

     平凡社、1600円

    2018年10月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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