評・本郷 恵子(中世史学者・東京大教授)

『天皇はなぜ紙幣に描かれないのか』 三上喜孝著

無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 明治時代の紙幣には、神功じんぐう皇后をはじめとして、古代の英雄的人物の肖像が描かれている。天皇を頂点とする国家建設をめざした近代日本が、その理想型を古代天皇制に求めたことが、紙幣のデザインにも反映していたのだと考えられる。だが天皇その人が紙幣に登場することはなかった。いったいなぜ?

 お堂の壁に残された、江戸時代初期の落書きを調査したところ、実は全国の寺院に同様の定型化した落書きが見られることがわかった。巡礼者によるリツイート?

 ユネスコの「世界の記憶」に登録された上野こうずけ三碑。そこに刻まれた文字を読み解くことから見えてくる、古代の男女観の本音と建前とは?

 断片的な史料をたどるうちに、思いがけない方向に道が開けてゆく。過去の生活の細部が照らし出され、さまざまな時代が互いに響きあっていることがあきらかになる。

 日本史なぜなぜ・日本史小ネタ集の類は数多いが、本書はそれらとは一線を画する。歴史学者としての著者の幅広さと、懐の深さに裏付けられた内容である。謎の答えは読んでみてのお楽しみ。

 小学館、1400円

47409 0 書評 2018/11/05 05:22:00 2018/11/05 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181029-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ