『絶滅できない動物たち』 M・R・オコナー著

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「絶滅できない動物たち」(27日午前7時49分、東京本社で)=小林武仁撮影
「絶滅できない動物たち」(27日午前7時49分、東京本社で)=小林武仁撮影

遺伝子技術の行く末

 医療技術は日進月歩だ。生命倫理はいつも後手に回る。危篤患者の臨終を1秒でも遅らせるため全身にチューブを差し込むスパゲティ症候群や、故人が残した精子で妊娠する死後懐胎子が議論になったのは、ずいぶん前だ。今、生物の種の絶滅回避で、同様の倫理的葛藤が起きていることを、本書で知った。

 人間は、乱獲や環境破壊で多数の種を絶滅させてきた。近年の科学の進歩により「脱絶滅」の技術をも手に入れた。生物多様性の保全は大事だが、当の生き物の立場に立ってみれば、どうか。本書は、絶滅危惧種や絶滅種、それらの動物を愛し、研究し、倫理上の葛藤に悩む研究者たちの姿を生き生きと描くドキュメンタリーである。

 本書に登場する動物は、どれもユニークだ。ダム開発で野生では絶滅し、生命維持装置の中で生き残る小さなカエル。枝を道具として使う「文化」をもち、今は人工飼育下で生き延びるハワイのカラス。人間が放った亜種と交雑した近絶滅種のフロリダパンサー。iPS細胞の保存が試みられているキタシロサイ。わずか30年で史上最速の進化をとげた砂漠の淡水魚や、謎に満ちた生態のタイセイヨウセミクジラは、人知を越えた自然の奥深さを改めて考えさせる。

 リョコウバトは、種として2200万年も存続し50億羽もいたのに、たった100年で人間に絶滅させられた。私たちホモ・サピエンスの祖先の隣人だったネアンデルタール人も、数万年前に絶滅した。近年のバイオテクノロジーの進歩はすさまじい。ゲノム編集でリョコウバトやネアンデルタール人を「復活」させることは、もはやSFではない。それは許されることか。人間が自然を「保護」するほどかえって自然から遠ざかるというジレンマを本書はつきつける。

 日本でも、クローン技術によるトキやニホンオオカミの「復活」構想がある。地球は一つだ。対岸の火事ではない。大下英津子訳。

 ◇M.R.O’Connor=ジャーナリスト。マサチューセッツ工科大ナイト・サイエンス・ジャーナリズム・フェロー。

 ダイヤモンド社 2200円

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48721 0 書評 2018/11/12 05:25:00 2018/11/12 05:25:00 「絶滅できない動物たち」(27日午前7時49分、東京本社で)=小林武仁撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181106-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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