評・土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

『探偵小説の黄金時代』 マーティン・エドワーズ著

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「探偵小説の黄金時代」(2日、東京都千代田区で)=横山就平撮影
「探偵小説の黄金時代」(2日、東京都千代田区で)=横山就平撮影

英ミステリファン必読

 第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、一九二〇年から一九三〇年代が「探偵小説の黄金時代」だった。アガサ・クリスティー、アントニー・バークリー、ドロシー・L・セイヤーズらを中心に、いまや古典とされる本格探偵小説の傑作名作が枚挙にいとまがないほど続々と刊行され、豪華絢爛けんらんに咲き誇ったこの英国黄金時代、ミステリ・ファンなら現場に居合わせたかったといちどは夢見たことがあるはずだ。アメリカ探偵作家クラブ賞(評論評伝部門)受賞の本書はその夢をかなえてくれる文芸ノンフィクションの大作である。

 第一次大戦後にジャンルの革新を担った作家たちは、ディテクション・クラブ(「探偵クラブ」といったところか)なる団体を結成する。そのクラブの軌跡を丹念にたどって作家たちの人生を語り、政治や時代との関わりを探って作品成立に至る裏側を紹介する。戦争の傷跡があり、不幸な結婚や恋愛があり、世界恐慌の荒波や次なる戦争への恐怖を共にしながら、宗教や倫理を問いながら、だからこそ読者を楽しませようと作家たちはたくましくもユーモラスに挑戦を続けた。作品にインスピレーションを与えた現実の犯罪記録の紹介も豊富に、こぼれ話満載の脚注もワクワクと、ジャンルを切りひらいた若き巨匠たちの青春物語の趣もある。

 クリスティー、バークリー、セイヤーズの人生の謎を解いて、やがて現在のミステリの隆盛に話題がつながる最終章まで、読みごたえ満点、このジャンルがお好きなあなたなら、イッキ読み必至の一冊である。もちろん読んでみたいけれど興味はあるけれど海外ミステリになかなか手が出ない、そんなあなたには格好のガイドブックともなる。巻末の作家作品の索引や引用邦訳一覧、参考文献一覧を片手に、本書登場の傑作名作を手に取ってはいかがだろう。これから「黄金時代」を体験するあなたがうらやましい。ほんと、おもしろいよ。森英俊、白須清美訳。

 ◇Martin Edwards=英国のミステリー作家、評論家。ディテクション・クラブ会長、英国推理作家協会会長。

 国書刊行会 4600円

48862 0 書評 2018/11/19 05:26:00 2018/11/19 05:26:00 「探偵小説の黄金時代」(2日、東京都千代田区で)=横山就平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181112-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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