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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・宮部みゆき(作家)

    『ペットと葬式』 鵜飼秀徳著

    供養の底にある死生観

     映画『ポルターガイスト』(一九八二年)は、(すみませんネタバレします)墓地を潰して開発された住宅地に住んでしまった家族が心霊現象に脅かされるお話だ。序盤に、一家のペットの小鳥が死んでしまい、死骸をトイレに流そうとした母親が、幼い娘にその場を見つけられてバツが悪くなり、きちんと葬る――というシーンがある。後に一家を襲う恐怖の心霊現象が、ないがしろにされた死者たちの怒りによるものだというストーリー展開に照らせば、これはなかなか含みのあるシーンだ。もしも子供の目をはばからず、トイレに流されても、小鳥の死霊は怒らなかっただろうか。人間と違って魂がない生き物だから大丈夫? そんな線引きはどこにあるのだろう。

     本書は『寺院消滅』や『無葬社会』等の著作を通し、現代の日本人にとっての「死者を供養する」意味(とその変化・変質)を考えてきた著者が、では供養の対象が人間以外のものである場合はどうなのか、その背景にはどんな心模様があるのかを論考したものである。様々な供養の現場が豊富に取材されており、堅苦しさは皆無の文章なので、主体的にペットを飼っている大人の読者の方々だけでなく、ぜひ中高生の皆さんにもお勧めしたい。

     供養というものは、そうしたい・そうせねばならないというはっきりした意思=思想がなければできない行為だ(まさしく小鳥の死骸をトイレに流すように、やらなければやらないで済んでしまう)。その根底にある動機としての「死生観」を学ぶのに、本書は素晴らしい導入の一冊となるだろう。

     私たち日本人が供養しているのは、可愛かわいいペットの犬猫小動物だけではない。クジラやうなぎ、マグロなどの魚介や、シロアリ・ハエなどの不愉快な害虫、草木サボテンも供養の対象だし、ロボット犬の葬儀だってある。そうそう、『南極物語』のタロとジロがどのように慰霊されたのかも、本書を読めばわかります。

     ◇うかい・ひでのり=1974年生まれ。フリージャーナリスト、実家の寺の副住職、浄土宗総合研究所嘱託研究員。

     朝日新書 890円

    2018年12月10日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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