評・加藤 徹(中国文化学者・明治大教授)
『僕たちは、宇宙のこと ぜんぜんわからない』 ジョージ・チャム、ダニエル・ホワイトソン著
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日本を含む東アジア人は、なまじ古い歴史をもつがゆえに、娯楽も教養も、好奇心を過去の歴史で消費してしまう。一方、歴史が若い米国人は、知的エネルギーを自然科学や無限の未来に向ける。
本書は、米国的知性を体現した恐るべき教養書である。文体はこのうえなく平易でユーモラスだが、内容は深い。私たちが当たり前に思っている時間や空間、物質が、いかに不思議で謎に満ちているか。あらためて気づかされる。
著者のスタンスもすごい。「ここまでわかった宇宙」ではなく「わからない宇宙」だ。次元はいくつあるのか。宇宙の本当の大きさは。宇宙線はどこから来るのか。宇宙人はいるのか。今もわからない。著者は、未解決の問題を紹介し、なぜ未解決なのか、その理由を考える。模範解答がない問題を考える思考のプロセスは哲学的で、面白い。
米国人は、探検されていない広い未開の地を前にすると、わくわくするのだ。米国の画期的なイノベーションの数々は、こういう知的素養から生まれるのだろう。宇宙論に興味のない人にもおすすめだ。水谷淳訳。
ダイヤモンド社、1800円
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