評・加藤 徹(中国文化学者・明治大教授)

『日本の「中国人」社会』 中島恵著

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「日本の「中国人」社会」 中島恵(21日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影
「日本の「中国人」社会」 中島恵(21日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影

等身大の温かい目線

 在日中国人の数は、高知県の人口と同じだ。約73万人で、なお急増中である。フリージャーナリストである著者は、多数の在日中国人に取材し、その生き方や本音を紹介する。彼らは、ビジネスマン、主婦、留学生、声優、マッサージ師など、経歴も来日時期もさまざまだ。

 「日本の教育はゆるすぎる」「中国のほうが数学や理科の授業は進んでいる」という親の声は、耳が痛い。「日本にいればマイホームを持つという夢を比較的簡単に実現できる」と中国人が考える理由も示唆的だ。中国のGDPは日本の約3倍になったが、大都市のマンション価格は日本より高くなり、戸籍による差別も残る。日本は平等で、中国人でもローンを組める。

 彼らの価値観も多様だ。「日本語ができなくてもまったく不自由しない」という理由で中国人住民が半数を占める埼玉県川口市の団地に住む人もいれば、「中国人が多いから」という理由で池袋や新宿に住まない中国人富裕層もいる。

 中国人は、政府に操作されるマスコミの情報より、口コミやSNSを信じる。私たちと学校や会社で机を並べる在日中国人も、SNSなど独自の情報網を持ち、それに基づいて生活している。日本人が、電子商品取引を手がける在日中国人と手を組み、中国進出のリスクを回避しつつ中国に商品を直接販売するなど、成功例もある。近年、中国人の日本に対する印象は大幅に好転した。在日中国人が毎日、日本の本当の姿をSNSで発信していることが大きい。

 かつて夏目漱石は「人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはりむこう三軒両隣りにちらちらするただの人である」と『草枕』で書いた。日本の近未来を作るのは、中国の大富豪でも国家主席でもない。「ただの日本人」と「ただの中国人」の共生だ。等身大の温かい目線で中国人の真実を紹介する本書は、日本の問題点や可能性も示す、得がたいルポルタージュである。

 ◇なかじま・けい=1967年生まれ。フリージャーナリスト。著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』。

 日経プレミアシリーズ 850円

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60034 0 書評 2019/01/14 05:22:00 2019/01/14 05:22:00 「日本の「中国人」社会」 中島恵(21日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190107-OYT8I50005-T.jpg?type=thumbnail

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