『神戸 闇市からの復興』 村上しほり著

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「神戸 闇市からの復興」村上しほり(7日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影
「神戸 闇市からの復興」村上しほり(7日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影

震災復興と重なる姿

 阪神・淡路大震災から今年で24年。陸海交通の要所である神戸は、地震と火災で甚大な被害を受けた。それよりもさらに半世紀前、その同じ都市は、米軍の空襲の焼け跡からい上がってきていた。地域的な分布は重なりつつずれているが、神戸の戦災からの復興の過程を学ぶことは、震災後の神戸のあり方を考えるうえで実は欠かせないのではないか。本書のモチーフはこのあたりにあるような気がする。

 著者は、戦後占領軍が神戸を占領するなかで簇生そうせいした「闇市」の息吹を、GHQ文書、日本の公文書、インタビュー、『神戸新聞』の記事、さらに本書の特徴であるたくさんの珍しい写真や絵や地図によって復元しようとする。商人、浮浪者、テキヤ、警察、私娼ししょう、画家、作家、中国人、台湾人、朝鮮人。集まってくる人がとにかく多様だ。まるで持ち運び可能な戦後神戸闇市展覧会のような贅沢ぜいたくな作りになっている。

 ここで注目されているのは、占領下神戸の闇市の展開で生まれた三宮国際マーケット、三宮ジャンジャン市場、三宮高架商店街、元町高架通商店街、湊川公園商店街の五つの事例である。とくに興味深かったのは、三宮ジャンジャン市場。日雇い労働者が集まり、うどんやおでんややきとりを食い、酒をひっかける飯屋や食堂にあふれた場所だ。ここは衛生改善の対象であり、火災もしばしば起こるが、「弱者救済のための安価な食事の提供と、これを媒介とした主体間の交流が生じ」ている「アジール」だったと著者はまとめている。

 闇市の研究は本当に難しい。わたしも第1次世界大戦中のドイツの闇市について調べたが、なにしろ闇市は統制違反なので、史料が残りにくく、収集に苦労した記憶がある。バラックから漂ってくる食べものの匂いや、残飯が捨てられたドブ川に群がる魚、そして市場の上を走る列車の轟音ごうおん。闇市を五感で感じられるほどまで史料を集めた著者の情熱に感服した。

 ◇むらかみ・しほり=1987年生まれ。神戸大大学院人間発達環境学研究科研究員。都市史・建築史が専門。

 慶応義塾大学出版会 4200円

無断転載禁止
60415 0 書評 2019/01/21 05:27:00 2019/01/21 05:27:00 「神戸 闇市からの復興」村上しほり(7日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190115-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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