『ふたつのオリンピック』 ロバート・ホワイティング著

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「ふたつのオリンピック」ロバート・ホワイティング(7日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影
「ふたつのオリンピック」ロバート・ホワイティング(7日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影

ガイジンが見た戦後史

 2020東京五輪が迫る中、1964年の東京五輪の頃の振り返りも目にするようになった。あの頃はどんな時代だったのか。

 <まず目を奪われたのはひとの群れだった><次に目についたのは建設工事だった><とにかく街は騒音だらけだった>

 それが19歳で米空軍の下士官として来日した米国人の62年の東京の印象だった。当時の東京は<歴史上最も劇的な変化のひとつ>という形容の通り、高速道路、地下鉄、新幹線など、あらゆるものが東京五輪に向けてつくられていた。まもなく彼は東京の猥雑わいざつな魅力にかれていく。

 <東京は、金持ちの兵士や海外からやって来た詐欺師たちを大勢引き寄せる街だった>

 本書は日本で半世紀あまり暮らしてきた「ガイジン」ジャーナリストが半生を振り返った自伝である。ただし、その歩みは平凡とはほど遠い。米国の特務機関やメディア、あるいは暴力団など、明に暗に重要な人物との出会いがあり、ある種の戦後史と言えるほど起伏に満ちている。

 当初は米軍の情報解析の仕事に就いた著者だが、退屈で数年で退役。学校や個人指導で英語を教えるようになる。ただ英語が話せるだけの存在だったが、そこから会社経営者や医者、著名人からヤクザまで、著者の多様な人脈が広がっていく。

 実際、周囲の米国人が帰国を促しても、「サラリーマン」になった著者は日本に残る。赤ちょうちんや日本の野球のおもしろさがわかっていったためだ。そして70年代半ば頃から、日本を知悉ちしつするジャーナリストとして、『菊とバット』などの著書で国内外で活躍していく。

 本書のよさは、描写が具体的で空気感が伝わる描き方をしていることだ。60年代は雑然と煙った感じがあり、バブル期はお金でゆるみ、震災時は誰もが必死。米国人ジャーナリストの目と生き様を通して、この半世紀で東京がどのように変貌へんぼうを遂げたのか見えてくる。玉木正之訳。

 ◇Robert Whiting=1942年、米国生まれ。空軍に入隊して来日。日米の文化をテーマとした著書など多数。

 KADOKAWA 2400円

60449 0 書評 2019/01/21 05:23:00 2019/01/21 05:23:00 「ふたつのオリンピック」ロバート・ホワイティング(7日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190115-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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