ツナグ 想い人の心得…辻村深月著 新潮社 1500円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

◇つじむら・みづき=1980年生まれ。2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞、18年『かがみの孤城』で本屋大賞。
◇つじむら・みづき=1980年生まれ。2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞、18年『かがみの孤城』で本屋大賞。

命の尊さを讃える物語

 評・宮部みゆき(作家)

 ツナグ。本書の世界では「使者」と書いてそう読む。それは死者と生者を会わせることができる窓口。生者から依頼を受け、死者と交渉し、面会の場を設定するのがツナグの仕事だ。ツナグは知る人ぞ知る存在で、作中でも登場人物の一人が「都市伝説みたいなものかと思ってた」と発言している。仮にあなたや私が懐かしい死者との面会を切望してツナグを探しもとめても、出会えるかどうかは「ご縁」による。

 作者の辻村深月さんは今さらご紹介するまでもない人気作家だが、その多彩な作品群のなかでも、二〇一〇年に上梓じょうしされた『ツナグ』はひときわ光り輝く逸品だ。長年にわたってツナグをしてきた優しい祖母からその役目を引き継ぐ渋谷歩美という高校生の男の子の目を通し、死者との再会を望む人びとのおもいと、ひとときの再会から生まれる波紋のようなドラマを描いた美しい連作短編集だった。

 本書はその待望の続編である。作品内時間では前作から七年後のお話なので、歩美は小さなおもちゃ会社に勤める社会人二年生。ツナグとしての経験も積んで一人前になっている――はずなのだが、第一話ではなかなか彼が出てこない。「私が使者だよ」という、小生意気で達者な子役みたいなこの女の子は何者なんだ? と気をむのも楽しい導入から、五へんのエピソードが展開される。

 歩美の七年の歩みに、現実世界では九年の時が過ぎた。そのあいだに多くの自然災害が起こり、数多あまたの悲しい別れがあった。死者への祈りに、私たちは幾たびも頭を垂れてきた。この厳しい時代に、『ツナグ』のシリーズほどふさわしいお話はない。今を生きる読者に寄り添い、命の尊さをたたえながら、「死が全てを無に帰すわけではない」ことも思い出させてくれる。古来から、まさに人の心をそのように慰め、明日への勇気を与えるために、物語というものは創り続けられてきたのだから。

無断転載・複製を禁じます
890651 0 書評 2019/11/10 05:00:00 2019/11/18 10:59:29 書評 ツナグ(30日、東京都千代田区で)=川口正峰撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191109-OYT8I50043-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
入泉料割引
NEW
参考画像
ご利用料金割引
NEW
参考画像
3080円2464円

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ