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アメリカの制裁外交 杉田弘毅著

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破壊力大きい金融制裁

評・篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

岩波新書 840円
岩波新書 840円

 21世紀の国際関係を特徴づける大きな現象を、体系的にまとめた。アメリカの単独経済制裁は、2001年の9・11テロ以降に本格化した。この現象が、それ以前の経済制裁と異なるのは、貿易制裁ではなく、金融制裁である点だ。その破壊力から、過去20年間の国際関係に大きな動揺をもたらしてきた。

 物の移動を止めて制裁を加える貿易制裁は、非国家主体が暗躍する「対テロ戦争」の時代には、効果を持たない。そこでアメリカは、「基軸通貨ドルと最強の金融システム」を利用して、米国の国内法を根拠にして、制裁対象をめぐる金の流れを止める制裁を頻繁に発動するようになった。制裁対象は、無名の個人から国立銀行まで、多岐にわたる。ある日突然、自分の銀行口座を使えない状態に置かれる。冤罪えんざいであっても、回復するまでに、相当の年月を要する。

 制裁対象の口座等を持つ銀行に対しては、米国法にもとづいて、米国当局が、巨額の制裁金を課すことができる。ニューヨークを中心とする世界の金融システムからの閉め出しを恐れる銀行は、膨大な人員をあてても制裁遵守じゅんしゅに努める。リスク回避の傾向は高まり、過去10年の間に世界の送金業務は15%以上減ったという。

 当然、中国やロシアなどは、ドルの覇権を切り崩すために新しい決済システムの導入を進めている。ドル支配は一朝一夕には終わらないとしても、広範に発動される目的不明な制裁と、連邦政府と州政府の草刈り場になる不透明な制裁金徴収と使途への不満は、長期的には「米国の覇権の衰退につながっていく」。

 広範かつ長年の取材にもとづくジャーナリストの著作で、具体的な事例が濃密に盛り込まれており、引きこまれる。トランプ政権は、特に頻繁に経済制裁を発動してきた。果たしてコロナ危機後の時代に、米国の経済制裁はどのように展開していくのか。今後の世界情勢を見通すうえでも、重要な示唆が満載されている。

 ◇すぎた・ひろき=1957年生まれ。国際ジャーナリスト。共同通信特別編集委員。著書に『検証 非核の選択』。

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1237279 0 書評 2020/05/24 05:00:00 2020/06/01 13:35:17 杉田弘毅アメリカの制裁外交(18日、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200523-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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