読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

100円を市に納付するのに銀行窓口で30分待った同僚の話

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 東一真

 私のある同僚の話です。この記者は最近、ある取材のために、ある人物を撮影しようとしました(事件がらみではなく、平和なインタビュー用の撮影です。念のため)。せっかくなので、東京都内のある市が管理する、ある美しい公園を、ある人物にちょっと歩いてもらって、その姿を撮影しようと考えました(ここまでお読みになって、「なんだこれ? 全然具体性がない!」と怒られる向きもあると思いますが、しばらくおつきあいください)。

 そこで、その同僚記者は、その市の担当窓口に電話して、公園での撮影の許諾を求めました。担当者は快く許諾した上で「公園占用料として100円を納付してください」と言ったそうです。この納付は、この市の公園条例に基づく正式なもので、同僚にも何の異存もありませんでした。

納付は指定の金融機関のみ、窓口では待たされ

 さて、話はここからです。100円の納付ですが、ATMなどから手軽にできると考えていたら、そうではなかったのです。まず、この市の担当課からその同僚記者の元に、「使用許可関係書類在中」と書いたA4判の封書が届きました。封書には、「○○市公金収納取扱店一覧」という紙が入っていて、銀行、信用金庫、信用組合のリストが書いてあります。100円の公園占用料は、特定の金融機関の窓口に行かなければ納められないのでした。

 同僚は千代田区大手町の超高層ビルにある、ある大手銀行に行きました。そして、公金を支払う窓口で、なんと30分も待たされたあげく、ようやく100円の納付ができたそうです。(左は領収書の一部です。画像を加工してあります)

 以上、固有名詞を使わずにぼんやりした表現で書きましたが、実話です。悲しい実話ですね。日本の行政のIT化の現状(というか惨状)を示していると思います。たかだか100円の納付のために、どれだけのコストがかかったのでしょう? まず、市の担当者は電話を受けて、封書を作って郵送する作業があったはずです。封書の郵便代は170円でした。それを受け取った同僚は、わざわざ銀行まで足を運び、30分も待って納付したのです。

かかった人数と時間に郵便代、コストは少なくとも1183円

 デジタル産業の世界でシステム構築などの費用計算をする際に、人月(にんげつ)人日(にんにち)人時(にんじ)という単位があります。人時は、英語ではパーソン・アワー(またはマン・アワー)で、1人の人間が取り組んで1時間かかる作業量を示します。この「100円納付」には我が同僚と、市の担当者の作業を合わせて1時間はかかったと推測されます。つまり「1人時」の作業と、郵便代の170円がかかっています。ここでは仮に、1人時の作業代金として、東京都の最低賃金である時給1013円を当てはめましょう。すると1183円がかかった計算になります。100円を納付するのに、ですよ。

 30分待たせた銀行も銀行ですが、銀行の窓口納付しか認めない市役所もどうでしょうか? もっと簡便な、コストの低い納付方法はないものでしょうか? 例えば、その市がPayPayなどのQRコード決済の「加盟店」となって、ホームページにQRコードを貼り付けておけばどうでしょう。パソコンで開いたホームページのQRコードをスマホで読み取って、QRコード決済アプリに「100円」を入力して支払えば、それで済むような気がします。それがダメならば、ATM払いや、コンビニ払い、ネットバンキングでの振り込みくらいのことはやらないと、世界から取り残されるような気がします。

残り:1465文字/全文:2937文字
読者会員限定記事です
新規登録ですぐ読む(読売新聞ご購読の方)
無断転載・複製を禁じます
2054162 0 シニアのための編集長コラム 2021/05/15 17:09:00 2021/05/21 10:54:07 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210506-OYT1I50064-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)