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おお! ワードの音声読み上げ機能

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編集委員 東一真

 自分がずっと慣れ親しんでいた機器やソフト(アプリ)に、自分の知らなかった便利機能を発見した時、「えっ、こんな機能があったんだ!」と、とても感動してしまいます。なんだか、自宅で宝物を発見したような、トクした気分になってしまいます。ここ半年間で、そんなお得な感動を3回も味わいました。きょうは、その一つ、ワードの音声読み上げ機能を紹介します。

ワードの「校閲」の中に「音声読み上げ」ボタンあり

 ウィンドウズパソコンを買うと、普通についてくるマイクロソフトのオフィスのなかにワードがありますね。文章を書くアプリで、ウィンドウズパソコンを使っている方は、普通に使っていると思います。最近のバージョンでは、書いた文章を音声読み上げしてくれる機能が付いています。

 ワードを開いて上部、「ファイル」「ホーム」「デザイン」などと項目が並んでいて、その中に「校閲」というのがあります。校閲をクリックすると、「A」という文字の下に「音声読み上げ」と書いたボタンがあります。読み上げたい文章の冒頭にカーソルを合わせて、この音声読み上げのボタンを押せば、自分が書いた文章を音声で読み上げてくれます。

あなたのお好みの声は「あゆみ」?「はるか」?それとも「イチロー」?

 画面の右上に再生ボタン、戻るボタン、進むボタンも出てきますので、これで操作します。また、スピーカーと歯車の組み合わさったマークを押すと、読み上げるスピードの調整と、読み上げる声の切り替えができます。Ichiroは男性の声で、Ayumiは高い女性の声、 Harukaは少し低くて太い女性の声です(ちなみに、マイクロソフトのブラウザー「エッジ」の音声読み上げでは、もっと多様な声で音声読み上げができます。ニュースを耳で聴くのに便利です)。

自分のミスを簡単チェック…見直すより、耳で聴いた方が有効

 さて、「ワードで音声読み上げができて、いったい何が良いのか?」と首をかしげる方もいらっしゃるでしょう。

 実は、私にとっては待望の機能だったのです。というのは、私は生来のそこつ者で、昔から文章を書くと誤字脱字のほかに、文字のひっくり返しが甚だ多かったのです(ひっくり返しというのは、「おはようございます」を「おはうよざごいます」のように文字の順番がひっくり返ることです)。入社して1年生のころ先輩記者から、「一体どうすれば文字をひっくり返せるの?」とあきれられ、驚かれていました。三つ子の魂百までと言います。今月で還暦を迎えましたが、いまでも、特にスピードを上げて書く原稿は誤字脱字、ひっくり返しの山です。

 そこで、力を発揮するのが、音声読み上げです。文章の誤字脱字などのミスは、目で読み返すよりも、耳で聴いたほうがずっと簡単に発見できます。このコラムもワードで書いていますが、書き上げた後、音声読み上げを使って耳でチェックするのが習慣になっています。唯一チェックできないのが、同音異義語の間違いです。音では確認できないため、もちろん読み返して、目でも確認しています。

「音声読み上げ」くんにも苦手が……

 さて、とても便利な音声読み上げですが、時々、あっと驚く、間違った読み上げ方をすることがあります。「近似値(きんじち)」を「ちかにあたい」と読み上げられた時には、聴いていて少しギョッとする程度ですみましたが、「津々浦々(つつうらうら)」を変なふうに読み上げられた時は、一瞬、ぼうぜんとしてしまいました。人間だったら、絶対にしない読み方をしたのです。

 マイクロソフトの「音声読み上げ」くんが、「津々浦々」をなんと読み上げたと思います? 「つおどりじうらおどりじ」って読んだんですよ。信じられますか?

 なぜ、「津々浦々」が、「つおどりじうらおどりじ」なのでしょうか? 私もこのビックリ読み上げに遭遇して、調べてみて初めて分かったのですが、同じ文字を重ねる記号の「々」は、「踊り字」と呼ぶのだそうです。その記号名をそのまま発音していたわけです。「つ・おどりじ・うら・おどりじ」と読んでいたのでした。

 ふふ~ん、と私は意地悪く笑いました。津々浦々がちゃんと読めない「音声読み上げ」くんは、きっと四字熟語全般に弱いに違いありません。つまり、マイクロソフト社のサーバー側に四字熟語のデータベースを完備していないので、一字一字適当に読み上げるしか選択肢がないのでしょう。

 試しに、思いつく四字熟語をワードに書いて、読み上げさせてみると、結果は散々でした。やっぱり四字熟語には、からっきし弱かったのです。どんなふうに読んだかというと……。

 呉越同舟(くれこどうふね)
 粉骨砕身(こなほねさいみ)
 一衣帯水(いちころもおびみず)
 羊頭狗肉(ひつじあたまいぬにく)
 鶏鳴狗盗(にわとりなきいぬぬすみ)

 むちゃくちゃに読み上げられる合成音声を聴きながら、なんだか幸せな優越感に浸ってしまいました。そこつ者の私でもやらかさない間違いを、機械が犯すのを聴くのは楽しかったのです。ちなみに「温故知新」「諸行無常」「試行錯誤」はちゃんと読めました。

 以前、このコラムで、グーグルの自動翻訳が実用レベルに達した、というお話をしましたが、自動翻訳、自動読み上げ、音声の文字化など技術は日進月歩ですので、以上のような変な読み間違いは、どんどん少なくなっていくでしょう。そして、ワードの音声読み上げも、完璧な校閲ツールとして力を発揮することでしょう。そう期待したいです。

プロフィル
東 一真( ひがし・かずまさ
 鹿児島市生まれ。読売新聞入社後は、編集局地方部(盛岡支局、新潟支局)を経て経済部、国際部。この間、米ハーバード大客員研究員や北京特派員も体験した。その後、メディア局で約7年間、「ヨリモ」「読売プレミアム」などウェブサイト運営に携わり、2018年4月からデジライフ面の編集を担当。著書に『「シリコンバレー」のつくり方』『中国の不思議な資本主義』(ともに中公新書ラクレ)。好きな作家はフィリップ・K・ディック。

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2133440 0 シニアのための編集長コラム 2021/06/19 17:00:00 2021/07/01 16:01:12 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210610-OYT1I50034-T.jpg?type=thumbnail

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