ネット50年 利便性とリスクと

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 インターネットは10月29日で誕生から50年を迎えた。開発に携わり、「インターネットの父」と呼ばれるレオナルド・クラインロック氏(米カリフォルニア大ロサンゼルス校=UCLA=卓越教授)(85)と一緒に、世界を一変させたインターネットの歴史を振り返る。(ロサンゼルス支局・久保庭総一郎、写真も)

生みの親の予想超え普及

初のデータ送信実験について振り返るレオナルド・クラインロック教授
初のデータ送信実験について振り返るレオナルド・クラインロック教授

 「これが世界初のインターネット機器。いまでいうルーターです」。UCLAの一角にある3420号室。クラインロック教授に招き入れられた室内には、高さ約2メートルの金属製ロッカーのような装置が保存されている。

 1969年10月29日午後10時30分、この装置で、インターネットの原型を使った世界初のデータ送信実験が行われた。北に約560キロ離れたスタンフォード研究所に向けて、「LOGIN」と送信を試みたが、「LO」の2文字でシステムがダウンしてしまった。

当初は国防目的

 送信実験は、米国防総省高等研究計画局(DARPA)の研究プロジェクトの一環で、そのネットワークはARPANET(アーパネット)と呼ばれた。

 当時は大型コンピューターに小さなコンピューターが複数ぶら下がる「中央集権型」のネットワークが主流だった。この方式だと中央コンピューターが破壊されれば、ネットワークが全滅する。冷戦時代の旧ソ連から核攻撃を受けても、全体が機能停止しない「分散型」ネットワークの構築が必要とされていた。

 ARPANETでは、UCLAを含む米国内4か所に装置が設置され、徐々にその他の大学や研究所などにネットワークは広がった。当初は全米に分散する研究機関のコンピューターをつなぎ、計算処理を共有するために使われた。

 だが71年に電子メールが発明されると、ネットワークを通した情報交換も可能となり、数か月後には通信量のうち75%が電子メールのデータになったという。

 こうしてインターネットの原型は進歩し続けた。だが、四半世紀の間、主な利用者はごく限られた研究者や技術者だった。機器や通信網は複雑で高価だった。

商業利用で発展

 現在のように利用者が一般に広がったのは90年代以降だ。インターネットの商業利用がはじまり、パソコンの価格も消費者の手に届くようになり、使い勝手もよくなった。94年に文字と画像を組み合わせて表示するブラウザーソフトが世に出ると、一般利用が爆発的に増えていった。ちょうどこの時期に、米国でヤフーやアマゾンなどがサービスを開始している。

 インターネットはその後も、通信速度、端末機器の性能、ソフトの利便性の3要素がそれぞれ向上し、ますます使いやすくなった。ネット利用者が増えることでデジタル情報の需要も高まり、紙や磁気テープで保存された「アナログ」情報が、どんどん「デジタル」情報に置き換わるようになった。

 ネット利用者と情報の関係を変えたもう一つの要素は「検索」技術の成熟だ。プログラムが自動で大量の情報を収集することにより、利用者は世界中のホームページから直接情報を入手できるようになった。

 クラインロック教授は「インターネットが発展する前から、色々なことを予測したが、想定外だったのはヒトとヒトのコミュニケーションの発展だった。99歳の母が7歳の孫娘とネットでやり取りするソーシャルメディアは想像できなかった」と振り返る。

信頼性・安全性…負の側面も

 利便性の代償としてインターネットは現在、情報の信頼性や安全性などに大きなリスクを抱える。クラインロック教授は、今後のネットの発展には、「数々のダークサイド」を乗り越えていく必要性を強調する。

 研究者らが中心だったネットの世界に「広告」が入り込んできたのは1994年春ごろ。クラインロック教授によると、米国のある弁護士らから、「米永住権の抽選制度」に関するメールが無差別に送られてきた。教授らは大量の返信メールを送りつけて、発信元のサーバーをダウンさせたという。

 この時期からネットワークは「営利目的」に徐々に性格を変え、個人情報漏えい、プライバシー侵害、悪意のある書き込み、フェイクニュースなど負の側面が広がっていった。

 不正侵入などのハッキングも「初期は10代のいたずらのようなものだったが、いまは成熟している。主体が国家、犯罪組織や過激派となり被害も深刻化している」という。

分断化防げるか 反作用として懸念するのがインターネットの「分裂化」だ。中国政府が、治安維持などの目的で国内外の特定サイトへのアクセスを制限しているように、ロシアやトルコ、場合によっては欧州連合(EU)も自由なネットワークを制限する可能性を指摘する。分断化は、利用者の増加で価値を高めてきたインターネットの歴史に真っ向から逆行する。

 セキュリティーの脆弱ぜいじゃく性は、ネット発展の歴史にも一因がある。クラインロック教授は「そもそも構築期には安全性をあまり考えていなかった。当初は研究者が中心だったし、利用者を増やすために、簡単に利用を始められるようにしていた」と振り返る。利用者認証やデータ保護の厳格化が重要だとしている。

インターネット50年を記念したイベントが開かれた(10月29日、米ロサンゼルスのUCLAで)
インターネット50年を記念したイベントが開かれた(10月29日、米ロサンゼルスのUCLAで)

 インターネットのさらなる進化を促すのが、すべてのモノをネットに接続する「IoT」だ。乗用車、荷物、街角のセンサーなど多くの機器が今後、新たにネットの世界に加わるとみられる。特に、次世代無線通信規格「5G」は、1平方キロ・メートルあたり100万台の機器を同時接続できるようになり、IoTの動きが大きく加速するとみられる。

無断転載禁止
894230 0 特集 2019/11/03 05:00:00 2019/12/09 10:17:14 初のデータ送信実験について振り返るレオナルド・クラインロック教授=久保庭総一郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191111-OYT8I50066-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み_東京2020オリンピックパラリンピックキャンペーン

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
挑むKANSAI
読売新聞社からのお知らせ