読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

真冬の京都でシャトルラン?~僕は叫んだ「荷物が重い!」

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 世間で一般的に想像される記者の持ち物は、ペンとメモ帳だろう。スーツの内ポケットからスッとペンとメモ帳を取り出し、「よければお話、お伺いできませんか?」とやる感じだ。

 でも、そんなスマートな記者は、僕の知る限りほぼいない。新聞記者は、とにかく荷物が多いのだ。

「恩田くん、相変わらず荷物多いね」

 オンライン部は記者が日常的に記事を書く部署ではないが、取材が全くないわけでもない。例えば、読売新聞オンライン(YOL)でウェブ小説を連載する小説家やアイドルグループ「AKB48チーム8」へのインタビューなどで取材に出る。僕もそんな部員の一人だ。

 基本、取材は1人でやる。写真部の記者がカメラマンとして同行するケースもあるが、通常は取材や撮影はもちろんのこと、取材場所の手配まで自ら行う。となると、荷物はスーツの内ポケットからペンとメモ帳だけとはいかない。結構大きなリュックサックに、カメラやボイスレコーダー、取材に必要な資料を詰め込んで、取材場所に向かう。急な雨に備えて傘も常備するため、リュックは相当重い。僕の場合、携帯ゲーム機も忍ばせているからなおさらだ。

 移動手段として車が欠かせない地方支局勤務だと、車に荷物を載せることができる。一方、東京の移動は電車がほとんど。「まるで、絵の具セットや習字道具を抱えた終業式直前の小学生のようだなぁ」と感じる時もあり、運動不足の体には結構こたえる。

 リュック一つで済むならまだいい。オンライン部の取材では、さらに荷物が増えることがある。あれは去年の冬、京都でのことだ……。

取材道具+X すべては読者のために……

 class=

 その日、僕は「歴史小説対談」という取材をすることになっていた。YOLで「夢幻」を連載していた作者の上田秀人さんと、現在、「幸村を討て」を連載中の今村翔吾さんが対談する、という取材。「夢幻」が単行本として発刊されることを記念して企画した。

 作家インタビューは僕の好きな仕事の一つだ。もともと文章を書くのは好きだし、作家の人たちは大抵、おしゃべりで、インタビューしているととても面白い。僕は意気揚々と2人の過去作品を読み込み、質問事項をバッチリ考え、取材場所として読売新聞京都総局を確保。写真撮影場所のロケ地に選んだ二条城からも許可をいただき、カメラマンも手配した。

よし。準備はバッチリ。後は京都に向かうのみ。

 会社を出ようか。そう思った瞬間、「あ、恩田くん、ちょっと待って!」。僕は浜崎先輩に呼び止められた。

 出た! オンライン部名物「滑り込みのお願い」。仕事内容が多岐にわたるオンライン部ではそれぞれが担当分野を受け持っており、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークも珍しくなくなっていることから、直前になって思い出したように何かを頼まれることが少なくない。さて、今回の依頼は?

「恩田くんさあ、サイン本、お願いしていい? よみぽランドの読者プレゼント。上田先生の『夢幻』だけじゃなくて、今村先生が執筆する『じんかん』の単行本にも。『夢幻』は現地にあるから、『じんかん』持っていってくれない?」

 お、何かと思えばサイン本。読者のためになるし、インタビューの時間を少し割いてお願いすればいいだけだから、別にそう難しい仕事でもない。

「分かりました、持っていきますよ」

「重いよ?」

「いやいや、本5冊でしょう。大丈夫で……」

 ドンッ! 余裕をかましているうち、机に置かれたのは、約500ページのハードカバーが5冊詰まった小さなダンボールだった。

「うっ、重っ」

 思わず声が漏れる。「楽勝」という甘いもくろみは、あっさりと打ち砕かれた。

 ダンボールをキャリーケースに詰め込む。カメラやノートパソコン、1泊分の着替えに、先生方や取材場所の京都総局へのお土産もある。およそ1泊の出張とは思えない大荷物を抱えた僕は、東京駅から新幹線に乗り込んだ段階で既にヘトヘトになっていた。

二条城を走れ! キャリーケースを引きながら!

荷物が重くても、砂利道でも、走らなければならない時がある

 京都総局で行われたインタビューは滞りなく終わり、先生方にも無事、単行本にサインをいただいた。

 続くミッションは、『夢幻』5冊と『じんかん』5冊の計10冊を東京に運ぶこと。郵送を提案されたが、大切なサイン本だ。責任感からか、取材を終えたことで気が大きくなっていたからか、僕は「自分で持って帰りますよ」と、その申し出を断った。

「じゃ、よろしくね」と編集者さんに渡された『夢幻』のサイン本も、『じんかん』と同じ約500ページのハードカバー。キャリーケースは京都に来た時よりさらに重くなった。

「まぁ、ころころ引いて帰ればいいので、何とかなるだろう」

 そう考え、荷物を持って写真撮影のためのもう一つの取材場所となる二条城に向かった。

 冬の京都は寒い。タクシーで現地に着いて、真っ先に浮かんだのは、「先生たちを寒空の下で待たせてはいけない」という使命感だ。

「受付を済ませてきますので、少々お待ちください! すぐ戻ります!」と、タクシー乗り場から受付へと走る。チケットを買い、先生方の元へ走って戻り、入場口へご案内。入場後はまた一人、事務所に走り、取材手続きを済ませ、また走って戻る。10冊のハードカバーが入った重いキャリーケースを引きずりながら、革靴にスーツ姿で二条城の砂利道を、ただただ走り続けた。

 二条城を訪れていた修学旅行生には「働くって、大変だな」なんて思われていたに違いない。でも、そんなことを気にするゆとりすらない。皆様をお待たせすることなく、速やかに写真撮影の段取りを整え、記事用の写真を用意する。そのことしか僕の頭の中にはなかった。大荷物だろうが何であろうが、ただひたすら走るのみ。

 撮影が終わった時、僕は一人だけぜえぜえ息を荒らげていた。足はがくがく震え、キャリーケースを引いた右手は、バチバチに張って痛い。京都駅で解散した後、僕はへたへたと待合室のベンチに座りこんだ。

 何はともあれ、東京の先輩方に連絡しなければならない。「無事に取材終わりました」と、オンライン部のチャットに打ち込むと、程なくして浜崎先輩から返信が来た。普段はあまり連絡がないのに、レスポンスが早いなんて意外だ。

 「先輩方が気遣ってくれている。僕は愛されているんだなぁ」と思いながら、スマートフォンの画面を開く。

 ――お土産は生八ツ橋がいいなあ by部長

「荷物が!!増える!!」

「了解です」と打ち返しながら、僕は京都駅でそう叫んだ。

プレゼント(よみぽランド)

 ニュースだけでないのが読売新聞オンライン。ポイントサイト「よみぽランド」では、たくさんのプレゼント応募をご用意しています。全国のおいしい特産品やジャイアンツ関連グッズ、健康グッズや書籍などなど……。追いかけきれないくらい盛りだくさんです。
ラインアップはどんどん変わっていきますから、毎日チェックして、「これだ!」というものを狙ってみてください。ちなみに昨年の一番人気は「カニ」でした。

年の瀬は歴史小説~上田秀人×今村翔吾 特別対談

 今回の原稿で取り上げた取材経過をたどり、読売新聞オンラインに公開された記事はこちら。お二人の「織田信長」論だったり、作家としての苦労ややりがいだったり。歴史・時代小説に詳しくない読者の方にも楽しんでいただける内容になったと思います。それにしてもインタビュー中に「毒親」という言葉が出てくるとは……。ぜひ、こちらも一読してみてください。
(記事中のサイン本プレゼント企画は応募を終了しています。ご了承ください)

 ※ この連載は読売新聞オンラインの運営を担当する「メディア局オンライン部」の日常を物語仕立てに描くノンフィクションです。登場人物の名前はすべて仮名ですが、記事中に出てくる読売新聞オンラインにまつわるサービスはすべて事実に基づいています。

無断転載・複製を禁じます
1979470 0 オンライン 2021/04/12 15:00:39 2021/04/12 17:26:23 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/onda04.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)