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まさかの全面広告デビュー!?はたして僕はどこへ行く

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 新聞記者なのに、僕は人と話すのが苦手だ。

 初対面の人と話すときは何を話せばいいのかわからないし、緊張するし、そうした姿をさらす度に、相手に嫌われちゃったんじゃないか、って不安にもなる。

 そもそも僕がこの社の試験を受けた理由の一つは、昔から読売新聞は大好きなポケモンとのコラボが多く、入社すればポケモンに関わる仕事ができるんじゃないかと思ったからだ。政治や事件のネタでバリバリ特ダネを連発するようなスター記者になれるだなんて思ったことはないし、いろいろあって入社1年でメディア局に異動になってからは、「自分の好きなものを細々と書きながら、ずっと日陰で生きていたい」と願ってきた。本当に。

 だから、藤岡パイセンに「お試しで、コラム書いてみない?」と言われたとき、正直怖かった。ライターとして、自分の連載をもらえるのは嬉(うれ)しいけれど、仮名とはいえ、自らを投影した「恩田さん」を主役としたコラム。避け続けてきた「日の当たる場所」に引きずり出されそうな予感がしたからだ。

 結局、気弱な性格も災いして、なし崩し的に連載は始まったが、イヤな予感は的中、いや、想像を超えるペースで現実のものとなりつつある。

恩田さんはフリー素材じゃない

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 ゴールデンウィーク直前のある朝のこと。テレワークから久しぶりに出社した僕に、国枝先輩がキラキラ笑顔で話しかけてきた。

「恩田くんを全面広告にしたから」

「……は?」

 広告? しかも全面? てか、また「過去形」だし、どういうこと?

 戸惑いまくっている僕に突きつけられたのは、新聞紙面のゲラ(下書き)の数々。どれもこれも、コラムで使われた僕のイラストがどーんと載っていて、読売新聞オンライン(YOL)の宣伝をしている。やれ「39(さんきゅー)キャンペーンやっています」とか、「プレゼントあります」とか、まるで読売新聞オンラインの公式マスコットキャラクターのようだ。

掲載された広告のゲラ(試し刷り)。そりゃ声も出ます……

「てか、聞いてないんですけど!?」

「いや、だって使いやすかったんだもん」

「だもんじゃないですよ! これ僕なんですからね、一応!」

 思わず叫んでしまった。まわりの社員の目線が刺さる。うっ、目立ちたくないはずなのに。

 深呼吸をして、国枝先輩に小声で事情聴取する。この際、先輩だろうが年上だろうが関係ない。

「いやこれ、どういうことなんですか……。何で僕がデカデカと……」

「大型連休中にYOLの宣伝広告を掲載することになって、いろいろあってこうなったの」

「いろいろって……具体的に……」

「デザイン会社によると、恩田くんのイラストが使いやすかったんだって」

 改めてゲラを見てみる。

 走っている僕の姿。「新聞のある暮らしをもっと豊かに」とキャッチフレーズを背負っている。やたらポップな文字と、僕の無表情っぷりが、妙に噛(か)み合っていて目を引く。別案は、僕が直立不動で立っていて、その後ろにYOLの魅力を訴えるメッセージがびっしりと並んでいる。

 デザイン会社が手掛けただけあって、さすがの出来栄え。「う~ん。ちょっと面白い広告かも」と思ったところで、ふと我に返った。

「てか、どうするんスかこれ……」

「恩田くん、今、いい広告だなって思ったでしょ?」

 うっ、否定できない。

「まぁ、……思いましたけど」

「じゃあ、いいじゃない。確かに事前に確認しなかった私も悪い。だけど、これはこれでってことで!」

 完全に押し切られてしまった僕。「とにかく、過去形だけはもうやめてくださいよ」と、半ばやけくそ気味に言い放ち、自席に戻った。

 ため息をつきながらパソコンを開いていると、今度は「恩田さん企画」のそもそもの元凶である藤岡パイセンがニヤニヤしながら近づいてきた。

「珍しく荒れてたじゃん」なんて声をかけられたものだから、かくかくしかじかと事情を説明。パイセンは「国枝さんには困ったもんだね」と共感した後で、「でも、恩田くん、これはもしかすると、すごいことかもしれないぞ」と切り出してきた。

顔出しをする理由って?

ずっと日陰で生きていきたいのに、どうして……!

「そりゃ、すごいことですよ。全面広告なんですから」

「いや、そうじゃなくてさ。このイラストだよ。イラスト。多分、受け手の99.999%が知らないはずのキャラなのに、広告にしてもビシッとはまる。いや、さすがだよな」

 イラストレーターの城戸ふさ子さんが担当してくれている僕らのイラスト。

 ゲーマーで、ちょっとコミュ障で、でも仕事は真面目な20代後半男性……。およそ物語の主人公になり得なそうなキャラをなんだか憎めない存在に描いてくれている。

「どこにでもいそうな、普通の青年なんだけどね。手前みそになるかもしれないけど、この親近感ってなかなか出せないかも。少なくとも俺は好きになってるね」

「でも、親近感なら『よみちゃん』みたいなゆるキャラでもいいじゃないですか」

「まぁ、それもそうだけど、『中の人』だからいいところってあると思うんだよね。恩田くんさ、この連載始めて、社内でどれだけ声かけられたか思い出してみてよ」

 そう言われて、振り返ってみる。オンライン部ではもちろんだが、過去に仕事を一緒にした人や、全然知らない人からも声をかけられた。「オンライン部ってこんな仕事してたんだ」と言われたり、「あの恩田さんですか」みたいな感じで他部署との打ち合わせがスムーズに進んだり。少なくとも連載を始める前よりは、自分たちの仕事への理解(それとも同情?)は広がったと思う。

「記事とイラストの組み合わせで『恩田さん』に血が通いつつあるから、そういうふうに声をかけてくれる人が増えたんじゃないかな。ほら、この前、1面に出たときもすごかったじゃん」

 4月中旬、僕のイラストが載ったYOLの告知記事が朝刊の1面に出た。僕が直立不動で「ご登録をお願いします」と呼びかける内容の告知で、数千人の人がYOLに登録してくれた。個人的には「場所がよかっただけでは」と思っているのだけれど、単に「ご登録をお願いします」と呼びかける告知よりも数字がよかっただけに、部内では「恩田さん効果」なんて呼ばれている。

「だからさ、もうちょっとプロモーション、頑張ってみてよ」

 珍しく優しい声で僕を励ましてくる藤岡パイセン。なんだか言いくるめられたような気もするけど、僕が僕であることがYOLのためになるのであれば、引っ込み思案ながら、もう少し頑張ってみよう。そう思って僕がこくりと頷(うなず)いた瞬間――

「ということでさ、ツイッター始めない?」

「え……。え?」

 「出たとこ勝負」で始まった連載だったのに、キャンペーンの広告塔や公式ツイッターまで。

 果たして僕はどこへ行くのか?最近、ちょっと心配な僕がいる。

 恩田さんの公式ツイッターを開設しました。コラムの連載情報はもちろん、よみぽランドのプレゼントや、個人的に面白かった記事などを紹介していきます。結構お得な情報も多いので、フォローしておくとYOLがより一層楽しめます。

 開設したばかりで、今はツイートも、フォロー、フォロワーも少ないですが、ゆっくりのんびり育てていければと思っています。個人的にツイッターは10年近くやっているので、ある意味ホームグラウンド。引っ込み思案ながらに頑張っていきますので、ぜひフォローよろしくお願いします。ツイッターはこちらから

 ※ この連載は読売新聞オンラインの運営を担当する「メディア局オンライン部」の日常を物語仕立てに描くノンフィクションです。登場人物の名前はすべて仮名ですが、記事中に出てくる読売新聞オンラインにまつわるサービスはすべて事実に基づいています。

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2040831 0 オンライン 2021/05/11 15:00:33 2021/05/11 16:00:42 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/onda06.jpg?type=thumbnail

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