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「母親の問題」鋭く描く~「イオカステの揺籃」遠田潤子さんインタビュー

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 読売新聞オンラインで連載中の小説「イオカステの揺籃(ゆりかご)」の作者・遠田潤子さんが読売新聞のインタビューに応じました。「雪の鉄樹」「オブリヴィオン」などで、家族の問題を圧倒的な熱量で描き出す実力派作家が、今作では「母親の問題」に深く切り込みます。これまでの執筆について聞きました。

「イオカステの揺籃」あらすじ
 新進気鋭の建築家・青川英樹はバラが咲き誇る家で育った。美しい母・恭子と、仕事一筋の父・誠一。週末も父が不在がちだったり、妹の玲子と母との折り合いが悪かったりもするが、至って普通の家族だった。英樹の結婚生活も順調で、今は妻の美沙が妊娠している。満ち足りた生活はこれからも続くはず、だった。ところが……。
 「男の子……?」。生まれてくる子どもの性別を伝えた途端、母の表情が変わった。その日から始まった母の異常な干渉。この家は、何かがおかしいのかもしれない――。平和だと思っていた家庭の崩壊が始まる。

「強烈でエグい」嫁姑関係を

遠田潤子さん

――「イオカステの揺籃」の連載は170回を超えました。ここまでの感想を教えてください。
 ウェブでの連載は初めてで、最初は横書きに驚きました。普段は縦書きなのですが、画面で表示されると書いている時とは違ったように見えて、「あれ?」と戸惑いましたね。パソコンやスマホの設定にもよりますが、行間や余白の感じが紙と全然違います。特に会話が続いた時は、紙にはない「間」を感じました。
 1回分の文章量が短いことや、月1回のペースで来る締め切りなど、ウェブでの連載は慣れないこと続きです。ただ、だからといって書き方を変えるということはありませんでした。

――本作では「毒親」とも言える母親の息子への異様な執着や嫁姑関係などが描かれています。これまでも様々な作品で複雑な家族関係を描いてこられましたが、今作のテーマやねらいは何でしょうか。
 ずばり「母親の問題」です。母親と息子、母親と娘の両方を書きたいと思いました。
 最初は「母親との関係に疑問を持たない息子」を書きたかったんです。母親が大好きで、母親に愛してもらえるのが当たり前と思っている息子。そんな息子が結婚して、嫁姑問題に直面したらどうなるだろう、というのが出発点です。
 今作で描いた嫁姑関係は、テレビやインターネットで見るような“わかりやすい対立”ではありません。例えば露骨に嫌みをいったり、嫌がらせをしたりといったエピソードがあればわかりやすいのでしょうけれど、母親の恭子はむしろ息子の英樹のことを思って、良心から干渉してきます。だからこそかえって、強烈でエグい関係性が浮かび上がってきます。そしてその狭間(はざま)で英樹は妻を守るために戦うのではなく、優柔不断で「だらしない姿」をさらしていきます。

――母親と娘の関係とは?
 恭子自身、実母との関係性で虐待といっていい大きな問題を抱えています。そして、それが娘の玲子への接し方にも連鎖してしまい、ネグレクトに近い関係になっています。
この世に生まれてきた以上、誰にでも母親はいて、誰もが母親との関係で多かれ少なかれ、何かしらの問題を抱えているはず。母親と息子、母親と娘の両方の関係性から、母親の問題を描ければと思っています。もちろんそこには父親の問題も絡んできます。

――「イオカステ」はギリシャ神話で有名なオイディプス(エディプス)の実母の名前ですよね。
 オイディプスは実の母であることを知らずに、イオカステを妻にめとり、子をもうけます。ストレートに「母親としての業」を表現したくて、この名前を選びました。

――これまでの作品でも、複雑な家族関係や厳しい状況に直面する人物たちを描いています。
 生きるために自分の居場所をどこに見つけるかというテーマで、私は小説を書きたいのだと思います。その居場所を家庭に見つけることができれば楽なのでしょうけれど、そうでなければ家から逃げ出したり、家と戦ったりして、新しい居場所を自分で作らなければいけません。そのプロセスを私は書きたい。
 今作の主人公・英樹が家と戦えるかはわかりませんが、戦えない主人公もありですね。逃げ出すことが最善の時もありますし、逃げるから卑怯とも言いたくありません。
 私自身がだめな人間なので、だめな人物に共感するという部分もあるのかもしれませんね。これまでの人生も順風満帆とは言えなくて、「居場所を見つけて、何とか生きていこう」と自分に言い聞かせて生きてきたし、そういう思いを主人公たちに託しています。

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