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「番長」木曽義仲をダイナミックに描き出す~「猛き朝日」天野純希さんインタビュー

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 読売新聞オンラインで時代小説たけき朝日」の連載が始まり、作者・天野純希すみきさんが読売新聞のインタビューに応じました。主人公は源平合戦で活躍した「木曽義仲」こと源義仲。「希代の武士」としても「逆賊」としても知られる武将を、エンタメ性に満ちた歴史解釈を持ち味とする天野さんが、ダイナミックに描き出します。連載開始にあたっての意気込みや、抱いている義仲のイメージについて聞きました。

「番長」の魅力を多角的に描く

天野純希さん

――連載開始にあたって、今の率直な気持ちを教えてください。
 義仲は前々から書きたかった人物なので、「やっと書ける」という気持ちです。戦国時代などに比べ源平合戦の時代はマイナーで、書く機会になかなか恵まれませんでしたが、来年のNHK大河ドラマが鎌倉時代を扱う「鎌倉殿の13人」に決まったこともあり、義仲への注目度も上がっているのでしょう。
 ウェブでの連載は初めてですが、今までと何ら変わらない姿勢で執筆に臨んでいます。横書きでの掲載になるので、見え方によっては表現を調整することがあるかもしれません。ですが、最終的には本になった時の形をイメージしているので、横書きだから特別なことをするということは、あまり考えないようにしています。

――義仲について最初に抱いた印象は?
 最初に知ったのは古文の授業です。平家物語の「木曽の最期」で読んで、当時は「田舎から出てきた暴れん坊だな」という印象でした。
 その後作家の仕事をする中で平家物語に触れる機会があったのですが、義仲が一番面白かったんですよ。平清盛や源頼朝のように政治ができるわけでもなければ、源義経のように戦いが上手というわけでもない。でも義仲には、人を引きつける魅力があった。暴れん坊ですが、親分肌で仲間思いな「番長」という印象でしょうか。「この人の側にいなきゃ」と周囲の人に思わせるような魅力を持つ人物です。知れば知るほど、「いつか書きたい」と思うようになっていきました。

――義仲をどのような人物として描いていきたいですか。
 義仲は史料があまり残っていません。平家物語でも早々に退場しますし、特に前半生についてははっきりとした史料がほとんどありません。だからこそ書きにくいのですが、どのように話を膨らませていくかは自由なので、その意味では書きやすくもあります。「猛き朝日」の序盤では、義仲が巴御前と出会うシーンが描かれます。これまでの義仲を描いた作品にはない描き方にしていますので、まずはそれを楽しみにしていただければ。
 あとは「暴れん坊」「気が強い」というもともとのイメージというか「型」にはまらないようには気をつけています。家来から、平家や頼朝側から、京都に住む市井の人々から……。義仲という一人の人物を多角的な視点で捉え、多面性を持って描いていきたいです。

歴史の勝者に共感できない

――戦国時代に“ロックバンド“を結成するデビュー作「桃山ビート・トライブ」や、信長に敗れた男たちを描いた「信長嫌い」など、エンタメ性にあふれた歴史解釈を得意とされています。ご自身の作風について教えていただけないでしょうか。
 史実や解釈は二の次にして、エンタメ性を強く意識しています。史実そのものを知りたいのであれば、歴史書や解説書を読めばいいですよね。小説でしか描けない時代の空気感や、その人の人間性を生々しく描くようにしています。
 これまで「勝利する話」をあまり書いてきませんでした。「歴史の勝ち組に学ぶ」「戦国武将のリーダーシップ」のようなタイトルのビジネス書を書店で見かけたりするじゃないですか。あれが個人的に苦手で、あまり「歴史の勝者」に共感できないんです。トップの人って、他の全てを踏みつけにしてそこに立っているわけですよね。それよりは、踏みつけられている側を描きたいなと思っています。
 「信長嫌い」では今川義元や佐久間信盛・信栄など、織田信長に負けた人物を描きました。彼らは信長に勝てる理由はほとんどありませんが、負ける理由は山ほどあるんですよ。戦は強かったが何かが欠けて負ける人もいれば、そもそもリングに立ったこと自体が間違いだった人もいる。一人の勝者に対して敗者はたくさんいますし、負けた側の方が、多様性があると感じています。

――「天野さんは歴史小説界のあだち充だ」という評価もあります。「タッチ」など、「週刊少年サンデー」で活躍した漫画家ですね。
 僕の作品は、少なくとも「友情・努力・勝利」の「週刊少年ジャンプ」ではないでしょうね。戦国時代の武将は戦で名を上げるのが鉄則なのに、「どうしてこんな戦ばかり」「戦には勝ったけれど……」とぼやくような武将を描く。そんな淡々としていて、どこか物悲しさもある雰囲気からでしょうか。
 作家の芥川龍之介は『木曽義仲論』で義仲について、「彼の一生は失敗の一生」としながら、「彼の生涯は男らしき生涯」と評しています。歴史の結果として「敗者」になってしまった人でも、その人が悪かったから敗者になった、とは限りませんよね。「敗者の美学」とまでは言わずとも、「負けた側のかっこよさ」はしっかり書いていきたいです。
 書きたい題材としてもう一つ、「わかりあえなさの中で、人間がどうあがくか」というものがあります。以前から思っていたことではありますが、新型コロナウイルスを巡る情勢で「人間はこんなにもわかりあえないんだ」という思いが一層深まりました。きっと宇宙人が攻め込んできても、世界は一つになれないでしょう。歴史小説にコロナウイルスはありませんが、戦はありますし、疫病や飢饉ききん、大火などの災害をテーマにすることもできます。作品でこれらのテーマを扱う時は、コロナ禍での経験を込めてみたいですね。

群像劇を楽しんで

――天野作品では女性がエネルギッシュに描かれています。男性社会になりがちな歴史小説において、女性の役割とはどういったものでしょう。
 言葉こそ悪いですが、戦国時代の女性は政略結婚や人質などの「道具」として扱われがちでした。だからといって作品でも「この辺りで華がほしい」と、物語の都合で女性を出すようなことはしません。道具としての立場に誇りを持つ人もいれば、嫌がる人もいます。女性だからといって型にはめず、一人の人間として明確に立場を持たせるようにしています。
 「猛き朝日」に登場する巴御前は、まず物理的に強いですよね。平家物語の「木曽の最期」でも、敵方の武将の首を素手でねじ切ったりしています。義仲の周りには巴御前の他にも女武者がいたりしたので、彼女たちにもフォーカスを当てていきます。女性の読者にも楽しんでいただける作品にしたいです。

――歴史・時代小説は用語や言い回しが独特で、難しいと思われがちです。これから触れる読者に向けて、楽しむ秘訣(ひけつ)を教えていただけますか。
 これまで歴史・時代小説に触れてこなかった人のほうが、先の展開を知らないので一層楽しめるのではないでしょうか。「えっ、信長って本能寺で死ぬんだ!」というように、新鮮な体験ができるのは得だと思います。
 難しい言葉は流して読んでも構いません。物語全体の流れさえ見落とさなければ楽しめるようにできていますし、作家も楽しんでいただけるよう、かみ砕いて書いています。「猛き朝日」でも、歴史の中で義仲はどういう存在であるとか、源平合戦がどういう経緯で起こったとかという背景などは、一度横に置いておいていただければ。

――これから本格的に連載が始まります。改めて、意気込みを教えてください。
 以前「木曽義仲を書きたい」とSNSで書いていたら、義仲とゆかりのある富山県小矢部市から「ぜひ取材にいらしてください!」とお声がけいただいたことがあります。あれから大河ドラマの放送も決まり、僕もこうして義仲で作品を書くことになりました。素晴らしいタイミングでの連載開始を、改めてうれしく思います。
 木曽義仲という一人の人間が、周囲の人とどのように関わっていくのか。群像劇として楽しんでいただければと思います。応援よろしくお願いします。

「猛き朝日」あらすじ

 時は十二世紀後半。十二歳の少年・駒王丸こまおうまるは、木曽の武士・中原兼遠の養子としてのびのび育っていた。
 ある日ささいなことから、信濃武士の子・根井六郎と取っ組み合いの喧嘩をした駒王丸。同等の家格であるにも関わらず、後日、六郎と根井家の当主が駒王丸の元へ謝罪に訪れた。二人は畏れ多そうに、「駒王丸殿はいずれ、信濃を束ねる御大将となられる御方」と深々と頭を下げる。駒王丸の実の父は、今は亡き源氏の棟梁・源義賢だった。初めて知る壮絶な生い立ち、母の存在、生き別れた兄の居場所――。駒王丸、のちの木曽義仲の波乱の生涯の始まりだった。
 平家を追い落とした希代の武士か、京の都で暴虐の限りを尽くした逆賊か。「朝日将軍」と呼ばれた謎多き英雄の生涯を、気鋭の作家が描き出す。

プロフィル

天野純希(あまの・すみき)
 1979年生まれ、名古屋市出身。愛知大学文学部史学科卒業。2007年に『桃山ビート・トライブ』で第20回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年『破天の剣』で第19回中山義秀文学賞を受賞。19年『雑賀のいくさ姫』で日本歴史時代作家協会賞を受賞。近著に『もののふの国』『もろびとの空 三木城合戦記』など。エンタメ性に満ちた歴史解釈とダイナミックな小説展開を持ち味とする気鋭の歴史小説家。

・小説「猛き朝日」を初回から読む

連載開始記念「国産うなぎ蒲焼」を3人にプレゼント

国産うなぎ蒲焼

 連載開始を記念して、桑鰻会の「国産うなぎ蒲焼」を、読売IDをお持ちの方3人にプレゼントします。揖斐川・長良川・木曽川の「木曽三川」の清流で育てられた良質の鰻を使用した逸品。木曽川上流の長野県は、「猛き朝日」の主人公・木曽義仲のゆかりの地です。こちらからご応募ください。

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