読売旅行のミーティングに密着!廃虚ツアーの原点に迫る

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 年の瀬も押し迫った12月のある日。僕は背中を丸めて、雨降る都心を歩いていた。

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 行き先は東京・築地にある読売旅行の本社。前回のコラムで紹介した廃墟遊園地「化女沼レジャーランド」見学ツアーを企画した新井田さんが所属する「テーマ旅行企画グループ」のミーティングが開かれるのだ。

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まるで修学旅行生?「次はどこに行こう」

 ビルの玄関で新井田さんに迎えられ、会議室へと案内される。「普段は打ち合わせスペースで雑談する感じでやってるんですけど、今日は恩田さんがいらっしゃるので、会議室を取りました」とのこと。恐縮しながら待っていると、新井田さんに続き、3人の社員さんが部屋に入ってきた。
 グループ長の松下さん、佐々木さん、永道さん。それに新井田さんを加えた4人がテーマ旅行企画グループのメンバーだ。全国の営業所の中から、企画力のある選りすぐりの社員を集めたのだという。

 それぞれと名刺を交換し、僕は部屋の隅に座る。いつもの様子を偵察するために、僕はいないものとして扱ってもらうことにした。

 ミーティングはまず、新井田さんによる宮城県での廃墟遊園地ツアーの報告から始まった。
 ツアー参加者からの意見は「自由度が高くて楽しい」「5時間もあって満足」といった肯定的なものが主で、注文と言えば、園内のトイレが使えず不便だったことと、参加者に仙台での時間も楽しんでもらう目的で、東京発仙台解散としたことへの「帰りの新幹線もツアーに含めてほしかった」という不満ぐらい。佐々木さんは「全体的にいい感じだったね」とうなずき、4人は今後の廃虚ツアーのプランについて話し始めた。

「何より普段は許可がないと入れない廃墟に堂々と入れるのがよかったよね。後ろめたさもないし」
「観覧車とか、メルヘンなところがいい感じに残っていたのが魅力的だったよ」
「トイレがねえ……。こればかりは廃墟なのでどうしようもないよね」
「コメントに『観覧車がよく見えるところで食べるご飯は美味しいです』ってあったよ。廃虚だけど、こういうのがファンには嬉しいのかなあ……」

 やいのやいのと雑談が繰り広げられる。
 確かに会議室よりは、打ち合わせスペースの方が似合う内容だ。YOLの企画もそうだけど、企画ってやっぱり雑談から生まれるものなのだろうか。
 程良く場が温まったところで、「次はどうする?」と松下さんが切り出した。アンケートには「次に行きたいところは?」という項目があったはず。新井田さんが答える。

「えー、『摩耶観光ホテル』が一番人気みたいです」

 摩耶観光ホテル。神戸市の摩耶山にあるリゾート施設の廃墟で、アールデコ調の意匠を取り入れた優美な姿などから「廃虚の女王」とも呼ばれている廃墟の聖地だ。一番に名前が挙がるのもうなずける。
 他にもいくつもの名前が挙がった。かつて炭鉱で栄えた長崎県の島『軍艦島』、宮崎県の集落『寒川村』、1970年代に閉山した岩手県の『田老鉱山』など……。中には『新潟ロシア村』『富士ガリバー王国』など、初めて聞くスポットも。

国登録有形文化財に選ばれることになった旧摩耶観光ホテル。「廃虚の女王」との異名がある(神戸市灘区で)=八木良樹撮影

 名前が挙がる度に、4人はネットで体験ブログやインスタグラムの写真などを確認しながら、「ここいいねえ」「すごいな」とつぶやきながら、イメージを膨らませていく。4人の話す姿は、なんだか卒業旅行の行き先を決める学生のようだった。

「ツアーを行うにあたって、安全面で不安がなく、管理者がはっきりしている場所であることが必須です。佐々木さん、どう進めましょうか」とリーダーの松下さん。
「管理者がはっきりしている場所は管理者に、そうでないところは地元の観光協会や自治体に当たるところからですかね。担当をそれぞれ決めてアポを取りましょう」

 和気あいあいとした雰囲気でありながらも、きっちりと決めるべきところは決まっていく。フットワークが軽いなあと思っていたら、新井田さんに急に水を向けられていた。

「化女沼の第2弾もやりたいですよね…。恩田さん、化女沼第2弾、どんなことやりたいですか?」
「は、はい、僕ですか?」

 4人にじっと見つめられながら考える。廃虚ツアーは楽しかった。みんな写真を撮っていたし、SNSにも色々とアップされていた。写真特化のツアーがあれば、もしかしたら……。

「コスプレ撮影、とか……?」

ボツの山から当たりを求めて

コスプレ撮影ツアー、形になるかも……?

 ポロッとつぶやいたその一言に、場の空気がピタリと止まる。
「やってしまった…」と冷や汗をかいていたら、新井田さんが食い付いてきた。

「いいかもしれませんね、それ。もっと聞かせていただけますか?」
「えーっと……。コスプレ撮影に化女沼を使えれば、コスプレイヤーさんたちは喜ぶかなあと…。あの、廃墟っぽい撮影施設を借りて、コスプレ撮影をしてる人って結構いるんですよ。それをリアルな廃虚でやれれば、いい写真、撮れそうだなって思いまして……」
「恩田さん、もし化女沼コスプレツアーがあるとすれば、例えば、どんな風に?」

 ぐいぐいくる新井田さん。

「あ、でも、お手洗い問題が深刻ですね。この前のツアーでは、トイレは近くのサービスエリアを借りていましたけど、コスプレ姿のままサービスエリアに乗り込むわけにもいきませんし……。あとは、着替えやメイクにも時間がかかりそうです。だから……」

 コスプレ専門ツアーは難しいかもしれませんね、と続けようとしたところで、松下さんが「いけそうじゃない?」とつぶやいた。

「カーテンで締め切っても、停車中はバス内の電気つけておけば、メイクはできますね」
「トイレもトイレ付きの車両があります。この日程なら抑えられるかも」
「コスプレが趣味の人にツアーを周知する広報が課題だけど、現実味はありそうだ」

 「バカな事を言った」としょんぼりしていたら、いつの間にか4人は具体的な候補日までリストアップをしてしまっている。「このコスプレイヤーさんに広報をお願いできないかな」「コスプレ専門誌とかサイトってないのかな」なんて言葉も聞こえてきた。

「新井田さん、これ本当に実現させるんですか?」
「わかりませんけど……。僕たちのミーティングって、無茶だとか実現可能性はさておき、『これ楽しそう』『あれだと喜ばれるかな』をどんどん出していくんです。ほとんどボツになったとしても、その中から一つでも当たりがあればいいんですよ」

 話を聞きながら、ほんとにYOLの企画と似ているな、って思った。
 恩田さんのコラムも最初から原稿を書くわけではない。たくさんアイディアを浮かべたり、実際に手を動かして「駄目だ」となったりして、ボツの山が積み上がる。それを繰り返してやっと1本完成だ。「あれやりたい」はたくさんあっても、形になるのはほんのわずか。企画とはそういうものなのだと、「オンライン部の恩田さん」を通して学んだ。

 なんて、しみじみと考えていると……。

「もしかして恩田さん、コスプレの経験あります? なんだかとても具体的なので……」
「え、えっ? まぁ、と、ところで! オンライン部の先輩から、『将棋に絡めたツアーなんてできないか』というアイディアを伝えるよう言われておりまして……」
「お、将棋! 聞かせていただけますか?」

 ついつい話が盛り上がりすぎて、危うく、密かな趣味がバレるところだった。
 でも、今回の取材で、化女沼の廃虚ツアーは、「あれやりたい」「これ楽しそう」から生まれたんだなと、知ることができた。もしかしたら、僕のコスプレツアーも、形になったりして……。もしなったとしたら、どんな内容になって、誰が来るのだろう。

 楽しみが一つ、また増えた。

(追記)この会議で話題に上った「摩耶観光ホテル」のツアー、実施が決定しました。さらに「化女沼レジャーランド」ツアーの第2弾も開催決定! それぞれのツアー詳細はこちら(募集は定員に達し次第、終了します。ご了承ください)

 ◆【JR東京駅~新横浜駅発】≪廃墟めぐり≫限定20名! 廃墟の女王『摩耶観光ホテル』に接近!「マヤ遺跡ウォーク」

 ◆【JR東京駅・上野駅・大宮駅 発】≪廃墟めぐり≫心に迫る廃墟遊園地… 化女沼レジャーランド見学ツアー

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